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アニメ『イエスタデイをうたって』感想・評価レビュー この作品は「鹿おどし」である【アニメレビュアーズ#8】

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 「アニメレビュアーズ」とは、異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想・評価レビュー・紹介&解説などを行うシリーズである。

 

 

【「アニメレビュアーズ」の概要や評価の指標などはこちら】

www.onajiananomujina.com

 

 

『イエスタデイをうたって』概要と評価

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放送時期

2020年4月‐6月

話数

全12話

ジャンル

青春群像劇

アニメーション制作

動画工房

 

スタッフ・キャスト情報

 

原作:冬目景(集英社 ヤングジャンプ コミックス GJ刊)

監督・シリーズ構成・脚本:藤原佳幸

副監督:伊藤良太

脚本:田中仁

キャラデザ・総作画監督:谷口淳一郎

総作画監督:吉川真帆

音響監督:土屋雅紀

背景:スタジオイースター

製作:イエスタデイをうたって製作委員会

 

魚住陸生:小林親弘

野中晴:宮本侑芽

森ノ目榀子:花澤香菜

早川浪:花江夏樹

木ノ下:鈴木達央

狭山杏子:坂本真綾

柚原チカ:喜多村英梨

福田梢:洲崎綾

カンスケ:前川涼子

評価

評価項目 作画 演出 音楽 声優 ストーリー キャラ 世界観・雰囲気 面白さ
点数 10 8 7 7 7 7 9 8

 

 

 

 

 

 

まるでこのアニメは「鹿おどし」

この作品の内容を簡潔に述べるとこうだ。

 

世は1990年代、スマホもない就職氷河期。

高校生から大学を卒業したばかりの若者たちが、仕事や恋愛や夢といった現実的で日常的な問題に直面したり、様々なコンプレックスを抱えて傷ついたりしながらも、なんとか前を向いて生きてゆく。

そんな彼らを事細かに描いた人間ドラマである。

本当にこれだけ。

 

何か展開が起こりそう!という期待感と緊張感が高まりながらも、結局は何事も起こらない。

そんな徒労が、1話から12話まで無限にいつまでも繰り返されるのだ。

まるで「鹿おどし」である。

鹿おどしは、静かに水という緊迫が高まりながら、やがて水受けがいっぱいになるとシーソーがぐらりと倒れ、一気に水と共に緊迫がほどける。それの無限ループ。

そこにはなんとなく”愛嬌””人生の気怠さ”を感じさせる。

この作品もまた、その「鹿おどし」と同じものを感じたのだ。

 

 

きちんとヒロインは可愛く描いてくる

”愛嬌”に当たるのは、ヒロインという存在。

肩にカラスを乗せ、好きだと一方的かつ積極的に迫ってくる高校を中退した少女。

大学生時代から片思いをする、現役国語教師の元同級生。

この作品にはこの2大ヒロインが両脇に立っており、”愛嬌”を司っていた。

 

僕はカラスを飼うような変な少女は御免なので、終始しなこ派であった。

『言の葉の庭』の雪野先生を連想せずにはいられなくて、重ねて観ていた部分もあったかもしれないが、やはりざーさんは大人の女性役が一番ハマる。

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後半のリクオと距離が近くなり、あともう一歩...という所で一進一退イチャラブしている流れは、ニヤニヤが止まらなかった。

だが周りの意見はハルの認識同様に辛辣で、『男をキープする最低な処女オンナ』と嫌われている。それでも僕はざーさんの声と演技に虜だったのだよ。

これもうざーさんのおかげでは?

 

 

また、一番の良回だったと思っている第6話では、ユズハラという1話だけの新たなヒロインが参戦。

キタエリの演技とエロいビジュアルが相まって全てを持ってかれたが、そこにしなことハルがリクオの部屋を訪れ、”マジで修羅場の5秒前”になる展開は最高だった。

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この阿保のように見開いた目よwww

あぁ、ユズハラみたいにフラットで雑に付き合える嫁が欲しい人生だった...

ユズハラはしなこ先生と違って絶対にヤリマ(ry

 

他にも、ハルが勤める喫茶店の店長や、リクオの友人・フクダの結婚相手の女性とか、出てくる女性陣がみな可愛かった。

特にフクダと結婚した福田梢ちゃんって子はNTRしたい。

 

 

これらが”愛嬌”である。

さすが萌えアニメでデビューを飾り、オタクに向けた作品で伸びてきた制作会社「動画工房」と言いたいところ...

アニメを視聴するモチベーションにおいて、ヒロインの存在は絶対的に大事だ。

 

しかし今作における動画工房は、可愛いだとか萌えだとかには重きを置いていない。

この項目ははっきり言って見当違いなレビューだと思う。

ここまでは”萌え豚”としての感想だ。

本番はここから。

 

 

良い意味で薄味な内容

原作の連載は約15年、単行本に換算して11巻とは思えないほど、内容は薄かった。

およそストーリーと呼べる物語は存在しない。

 

 

しかし、薄っぺらいという否定的な意味ではない。

そこには、時間という概念がこつこつと流れていて、時間と共に悩みは増えて行き、けれど問題も解決していく。人間関係がゆっくりと着実に変わっていく。

そこに僕は、人間が生きていくうえで感じずにはいられない”人生の気怠さ”というものを感じた。

「人生とは素晴らしい!」「生きるって、なんかいいよね」「生きていてよかった」

・・・そう思わせる作品が多い中で、良い意味で人生の気怠さや退屈さを感じさせてくれたのは初めてである。

 

だが、アニメというフィクションを観ているはずなのに変に現実味を帯びているから、どこか気持ち悪い印象も抱いた。

 

 

 

 

 

 

繊細に描かれた、モラトリアムで消極的なキャラクターたち

その気持ち悪い印象の正体は、キャラクターたちにあった。

 

 

とりわけモラトリアムな主人公。

大学を卒業しても定職に就かないフリーターであり、これといって特徴もない、まさにこの作品の持ち味を代表したキャラクター。

そんな強いていえば「イイ人」な主人公が、なぜこうもハルにモテるのかが理解できなかった。

しなこ先生は何となく腑に落ちたけれど、本作のメインヒロインであるハルが、なぜリクオに惚れたのかが最後まで不可解。

だから、僕の好みとは裏腹にハルが逆転勝利したENDは、未だ腑に落ちていない。

 

しかし、こういった要素はラノベ原作のラブコメアニメでは定番であり、耐性が付いてしまっている節もある。

そのため、盆暗な主人公が美少女にモテまくるご都合主義は、理性が気持ち悪いが本音では気持ち良い。

 

さらに視野を広げると、登場人物たちの性格があまりにも消極すぎるという点が、妙な気持ち悪さをより引き立てていた。

特筆すべしは後半の、リクオとしなこの一進一退のイチャラブの一連。

もう三度ほど体が交わっていてもおかしくないのに、なぜかいつもキスにすら届かないのだ。

しなこ先生が可愛かったから我慢できたものの、かなりイライラさせられた。

 

 

しかし、90年代を生きる若者を描いたという点から考えると、とても巧妙な描写の数々だったと思う。

モラトリアムは90年代の象徴だし、消極的は若者の象徴である。

キャラクターたちが、非常に”若者然”としていた。

成長してもまた戻って、不器用さや人間味がリアルだった。心理描写だって細かかった。

そんな若者的で消極的な行動を描きたかったのだとしたら、視聴者という傍観者側にも、もどかしさを超えて苛立ちさえも覚えさせた時点で脚本の勝利である。

けれど僕は、しなことユズハラ以外のキャラクターは好きになれなかったため7点に落ち着いている。

 

 

 

 

 

美しい背景美術、動画工房の芸当が細かい…!

キャラクターの内面の描写が細かすぎるが故に苛立ちを覚えたが、

映像面でも非常に細かいというか、繊細だった。

 

 

世の中は、動画工房という制作会社を過小評価しすぎである。

 

背景美術は息を飲むほど美しかった。一時停止確約。

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キャラクターたちの動きも含めた作画も、とても細やかであった。

そんな短い1カットで見切れねぇよ...と思うほどに。

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これは日本人的な細かさだ。

風景とか世界観とか雰囲気とかを大事にする日本人にはウケるが、良い意味で大雑把な海外ではウケにくいタイプ。

 

どれほどロケハンをしたのだろうか? 苦労や労力がかかっているのだろうか?

そんなこと、僕ら視聴者なんか知る由もない。

 

 

動画工房はの優秀さには前々から気付いてはいたが、その認識は増長させられた。

もうオタクに向けた萌えアニメを作ってるんじゃないんだと。俺たちが本気を出すと、こんなにも素晴らしい映像が作れるんだと。

そうこの作品を通して豪語してるように思えた。

動画工房の未来は明るい!もっと評価されるべき!!

 

 

 

 

 

 

まとめ:愛とはなんぞや?

お気に入り度:★★★

 オススメ度:★★★★ 

 

 

「愛とはなんぞや?」

そうキャッチコピーでは謳われているものの、僕はこの作品を視聴してもそんな事はさっぱり分からなかった。

少なくとも、この作品から教わる『愛』はなかった。

振り返ると何もないシナリオが足を引っ張っていた。

 

だけど、淡白かつ繊細な作品で、それを僕は「鹿おどし」に隠喩した。

どのレビューサイトでも評価が綺麗に分散されているように、この作品は良い面も悪い面も持っている。

 

僕は、動画工房の新たな挑戦的なものが感じられ、視聴して良かったとは思っている。

とりあえず、動画工房作品でオタクになった、もしくは動画工房作品に辛い毎日から救われたというオタクは、この作品は観てくべきだだろう。

 

 

それでは・・・

昨日をうたっても、過ぎた過去は変えられない...

 

 

 

©冬目景/集英社・イエスタデイをうたって製作委員会

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