異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想や評価を書いていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、「一万年と二千年前から愛してる~ 八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった~♪」の主題歌でお馴染みロボットアニメ『創聖のアクエリオン』の感想・評価・レビューだ。
ちなみにその主題歌のタイトルも作品名と同じ。
『創聖のアクエリオン』作品情報
放送時期 | 2005年4月-9月 |
話数 | 全26話 |
ジャンル | SF/ロボット |
アニメーション制作 | サテライト |
『創聖のアクエリオン』あらすじ・PV
創聖紀0011年の地球――人類は、すでにその人口の2/3を失っていた。
11年前の大異変が原因である。南極の氷が溶解し、1万2千年前に滅びたはずのアトランディアが出現、翼をもつ“堕天翅族”が蘇った。彼らは高度な科学で作り上げた生物機械兵器“神話獣”を次々と人類の都市に送り込み、人間を捕獲していった。生体エネルギー“プラーナ”を摂取するためである。
「もう一人の翼… “太陽の翼”が氷の街に、目を覚ます…」
異変後に、特殊機関“地球再生機構ディーバ(DEAVA)”が設立された。そのエレメント候補生リーナは、アトランディアの勇者“太陽の翼”の復活を予言する。
人類は反撃を期して、海底遺跡から3機のハイブリッド戦闘機“ベクターマシン”を発掘していた。1万2千年前、堕天翅族を滅亡へ追い込んだとされる伝説の兵器である。ベクターマシンが合体することにより、 “機械天使アクエリオン”が姿を現す。
アクエリオンを動かすには、マシンの機械生命と感応、共鳴できる“エレメント”と呼ばれる人間が必要だ。“エレメント”とは、大異変後の電磁場変化によって特異な能力が呼び覚まされた者たちである。彼らはその生体フィールドによって堕天翅族の催眠攻撃から身を守ることができた。その中でも特にアクエリオンの搭乗者は鋭敏な五感や純真な魂が要求されるため、10代半ばの少年少女たちがパイロットとして集められた。
救世主となる“太陽の翼”を捜索していたエレメントのシルヴィアは、ターゲットを発見して愕然とする。その少年、アポロは、盗んだ食料で生き延びている獣のようなストリート・チルドレンだったのだ。
そのとき、堕天翅族の“ケルビム兵”と“収穫獣”が襲いかかってきた。彼らもまた、“太陽の翼”を狙っていたのだ。ディーバはベクターマシンの出動を迫られる。
ついに“機械天使アクエリオン”の合体するときが来た……。引用:創聖のアクエリオン
『創聖のアクエリオン』スタッフ
原作:河森正治・サテライト
監督:河森正治
副監督:ところともかず
シリーズ構成:大野木寛、河森正治
脚本:大野木寛、高橋ナツコ、岡部雅子、杉原由美子、河森正治
キャラクター原案:金田榮路
キャラクターデザイン:藤川太
コンセプトデザイン:okama
アクエリオンデザイン:河森正治
メカニックデザイン:高倉武史
モニタグラフィックデザイン:佐山善則
美術監督:太田大
色彩設計:中山久美子
CGIアニメーション監督:井野元英二
音楽:菅野よう子、保刈久明
音響監督:三間雅文
製作:Project AQUARION
『創聖のアクエリオン』キャスト(声優)
アポロ:寺島拓篤
シルヴィア:かかずゆみ
シリウス:杉田智和
ピエール:小野坂昌也
麗花:小林沙苗
リーナ:佐藤裕美
つぐみ:日笠山亜美
ジュン:阪口大助
クルト/クロエ:朴美
不動GEN:石塚運昇
ソフィア:玉川紗己子
ジェローム:飛田展男
トーマ:森川智之
オトハ:兵藤まこ
ヨハネス:青森伸
『創聖のアクエリオン』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 5 | 6 | 10 | 8 | 6 | 6 | 9 | 7 | 6 |
お気に入り度:★★☆☆☆
オススメ度:★★☆☆☆
物語はエヴァンゲリオンの劣化版
僕がこの作品を知ったきっかけは、本作の1クール目のOPテーマ曲「創聖のアクエリオン」だった。
アニソンの中でトップクラスに好きな曲で、フルを余裕で歌えてしまうほど聴き込んでいた。
しかし、こんなにも作品と同タイトルの曲は知っているのに、作品自体は観たことがない。それで、これは観ておかないとな...と感じたのが視聴の契機である。
「創聖のアクエリオン」という曲のサビにはこんなフレーズがある。
「一万年と二千年前から愛してる 八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった~」
この曲の知識しかなかった僕は、”一万年と二千年にも及ぶ壮大でロマンチックな恋物語”が繰り広げられるのだと最初は思っていた。
だがいざ観てみると、思っていたのとは全然違う。
僕が当初思い描いていた物語は単なる僕の理想であったことが発覚し、全体的にガッカリな出来だった。
期待しすぎたのかもしれないが、期待してなくとも酷い出来だったと言わざるを得ない。
特に酷かったのは物語だ。
はっきり言って”エヴァの劣化版”である。
無駄に神話や遠すぎる過去と話を絡めて、専門用語や小難しい単語を容赦なく投入し、必要以上に話を難しくしている。
エヴァから始まった「分からないから面白い」という文化は本当に辞めてほしい。分かった方が面白いに決まってるんだ。
世界観もエヴァに近い。類似している、のは間違いないだろう。
物語の構成の面もエヴァそのまま。
[普通に日常生活を送っている ⇒ 敵が襲来 ⇒ 総員戦闘準備 ⇒ 出撃して戦う ⇒ 念心合体ゴーアクエリオン! ⇒ 必殺技で敵をお見舞いして勝利]
毎話これをやるのだ。キャラクターやロボットが違うだけで、やっている事はほとんどエヴァだし、もっと言えば特撮だし、周り回って特撮をアニメに落とし込んだエヴァである。
出撃して戦う流れも、10人近いメインキャラクターがアクエリオンを操縦できるのに、なぜか毎回主人公であるアポロが出撃して戦う。メインヒロインであるシルヴィアもよくセットで搭乗していた。
エヴァならエヴァンゲリオンを操縦できるのがシンジ君ほか二人しか居ないから腑に落ちるが、アクエリオンの場合は全く腑に落ちない。ただ主人公とメインヒロインを活躍させたいだけのご都合主義である。他のキャラクターの戦う姿や魅せ場も、もっとあって良かったと思う。
物語はそんな感じで、色々と端折りながら大雑把に進んでゆき、キャラクターの名言っぽいセリフは一切刺さらず...着地点(ラスト)も理解に苦しむものであった。
結局、この作品が最後まで何をやりたかったのかがサッパリ分からなかった。
メッセージ性もなければ、面白かったと満足感に溢れることもなく、良い作品に出会えたとカタルシスに浸ることもない。物語はよく分からなかったし、本当に何だったんだ...
作画崩壊と隣り合わせの作画
理解の追い付かない物語に、さらに酷さの拍車を駆けていたのが作画である。
1話からすでに「おや…? あやしいぞ…」と危ない空気が漂っていたが、もう4、5話辺りから画の整合性が失われていた。
なかでもすこぶる衝撃的だったのは、第19話「けがれなき悪戯」。
ただでさえ少なかった線の本数がごっそりと減り、画のタッチが完璧に変わっていた。
それどころか、仕上げ(ペイント:色付けのこと)までもが疎かになっており、配信で観ていた僕は「あぁ、19話で力尽きたんだな」と思った。
…しかしこれは”わざと”だったようで、登場人物どころか我々視聴者も敵にコントロールされてしまい、画がおかしくなるという演出だったようだ。
スタッフには『ポポロクロイス』などでお馴染み、うつのみや氏が今回だけ特別に背景美術に入られていたらしい。
いや分かんねぇーよ!
...でも、敵にコントロールされる前の水着のシーンから思いっきり崩壊してたからね?
敵にコントロールされている間だけ、意図的に作画のタッチが変わっているのなら分かるのだが、日常シーンから画のタッチが引き摺られてたらダメだろ...
20話以降はまたいつもの調子に戻ったので、力尽きたという訳ではなかったが、この回はあまりにも印象的で忘れられないゆえ、語らせてもらった。
総じて、予算が少なく、スケジュールもかなりキツキツだったのは容易に想像できる。
よく2クール26話でやろうと大風呂敷を広げたものだ。ロボアニメだから最低でも2クールは必要だったってのは分かるんだけど...
これがのちの典型的な低予算角川アニメである。潤沢な予算と余裕のあるスケジュールでアニメを作ってほしいものだ。角川さん見てる?
3DCGのレベルは当時トップクラス
手描きのアニメーションはもっと頑張ってほしかったが、メカニックのアニメーションなどで使われていた3DCGのレベルは非常に高い。当時としてはトップクラスじゃないだろうか?
2005年放送の作品なのに、CG浮きがあまり感じられず、しかもめちゃくちゃ動くので、2020年の今見てもほぼ違和感がない。
翌年放送の『ハルヒ』ですら、カマドウマのモデリングが若干CG浮きしていて気になったのに...
作品の看板メカとなっている河森監督デザインの「アクエリオン」は、3DCGだったことによって、唯一崩れずに終始カッコよかった。
色んな意味で3DCGでモデリングして正解だったよ...
菅野よう子氏の音楽が輝く
評価で音楽の項目だけが異様に点数が高いように、音楽はめちゃくちゃ良い。物語や作画は酷くても、音楽だけは輝いていた。
とりわけ、先述したが、この作品を知ったきっかけでもある「創聖のアクエリオン」という1クール目のOPテーマは神曲である。
ほぼOPを見るためだけに作品を視聴していたようなものだし、作中で「創聖のアクエリオン」がかかるとやはりテンションが上がった。
菅野よう子氏の作る楽曲は本当に素晴らしい。
2クール目のOPテーマ「Go tight」やEDテーマも最高だった。
だが、この音楽だけが完璧に仕上がっているアンバランスな状況を「菅野よう子の無駄遣い」だとは僕は思わない。
なぜなら、この 河森監督×菅野よう子 のタッグは『マクロスプラス』から始まり、『エスカフローネ』『アルジュナ』と続き、のちに『マクロスF』へと繋がっていく、切っても切れないコンビネーションだからだ。きちんとハマると名作が生まれる。
ちなみに「創聖のアクエリオン」は、カラオケやサブスクのアニソンランキングでは上位に喰い込むほど、作品の枠を超えて有名かつ人気な曲である。
恐ろしいことに、なんと本作は続編が2作品も制作されているのだが、ほぼこの1曲の力で作られたと言っても過言ではない。それほどまでに、この曲の力は偉大なのだ。
まとめ:あなたと合体したい・・・
ほかに強いて良かった点を挙げるとしたら、メインヒロインであるシルヴィア役のかかずゆみさんの声が可愛かったくらいかなぁ。完膚なきまでに『ドラえもん』のしずかちゃん。
「創聖のアクエリオン」という曲自体は知っているという人、まだ観てないけど気になっているという人は、できれば観ないことをオススメする。
これは駄作だ。
一万年と二千年前から駄作。八千年過ぎても駄作。一億と二千年経っても駄作。
もちろんこういう作品が好きだという人も居るだろうけど、内容は万人受けではないし、アニメーションのクオリティが特段高いというわけでもない。
どうしても観たい!…と言うのなら止めはしないが...
それでは、念心!合体! ゴーアクエリオン!!!