異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想や評価をネタバレ有りで書いていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、2014年にノイタミナ枠で放送されたオリジナルTVアニメ『残響のテロル』について、感想と評価を書きたい。
- 『残響のテロル』作品情報
- 高鳴るテロルと見飽きない構成
- スパイクに通ずる渋さがある柴崎刑事というキャラクター
- ”要らない子”だったヒロインが”必要”だった
- 冷たい菅野よう子氏の音楽
- まとめ:過激だが良作のピカレスクアニメ
『残響のテロル』作品情報
放送時期 | 2014年7月-9月 |
話数 | 全11話 |
ジャンル | アクション/クライム・サスペンス |
アニメーション制作 | MAPPA |
『残響のテロル』あらすじ・PV
ある夏の日──突然、東京を襲った大規模な爆弾テロ。
平穏なこの国を眠りから覚ました事件の犯人は、たったふたりの少年だった──。
“スピンクス”と名乗る犯人たちの、日本中を巻き込んだ壮大なゲームがいま、始まる。
『残響のテロル』スタッフ
原案・監督:渡辺信一郎
助監督:立川譲
キャラクターデザイン:中澤一登
音楽:菅野よう子
色彩設計:辻田邦夫
美術監督:金子英俊
CG監督:越田祐史
撮影監督:田村仁
編集:廣瀬清志
『残響のテロル』キャスト(声優)
ナイン(九重新):石川界人
ツエルブ(久見冬二):斉藤壮馬
三島リサ:種崎敦美
柴崎:咲野俊介
ハイヴ:潘めぐみ
『残響のテロル』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 9 | 9 | 8 | 8 | 8 | 9 | 9 | 8 | 8 |
お気に入り度:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆
高鳴るテロルと見飽きない構成
本作は、ナインとツエルブのダブル主人公(通称:スピンクス)が、テロリズムを行って日本国家に本気で喧嘩を売るという内容だ。
まず1話では、2人がぬいぐるみ型爆弾をあらゆる場所に仕掛けて、9.11のごとく都庁ビルを爆破する。
爆発シーンはとにかく映像ばえして、「マジでやりやがったwww」という謎の爽快感とカタルシスがあり、冒頭の掴みはバッチシだ。
同じ渡辺信一郎監督作品の『カウボーイビバップ』第22話でも、ぬいぐるみに爆弾を仕込む爆弾魔が居たような...
続く2話では、ナインがこっそり六本木警察署に爆弾を設置して爆破。
3話では一度テロが阻止されるが、4話ではハッキングを駆使して警察の捜査情報を流出させ、スピンクス側に大きな軍配が上がる。
しかし、5話からはFBIからの刺客・ハイヴとの対決がメインとなり、激しい攻防戦が展開されスピンクスは追い詰められるが、最終的には勝利を手にする。
そして11話(最終回)、遂には”核兵器”を使用して空中で爆発させやがった。
この徐々にスケールアップしていくテロルと、練られている構成のおかげで飽きなかった。一気に1クール駆け抜けることができた。
ただ、核兵器まで持ち出したのに一般人の死者がゼロだとか、ハイヴはマジで何がしたかったんだとか、都合のいい展開や気になる箇所もちょこちょこある。
だが、さくさくとテンポよく物語が進みスピード感があるため、都合のいい展開を隠して引っかかりを減らすのが上手かった。
それに元々「テロ」を題材にした無茶苦茶なアニメなので、ある程度のアウトロー(都合の良さ)は許容できてしまうのだ。
スパイクに通ずる渋さがある柴崎刑事というキャラクター
また、スフィンクスと柴崎刑事の”なぞなぞ”を介したやり取りも非常に面白い。
さながら『デスノート』の夜神明 VS エルの戦いだ。
スフィンクスが提示するなぞなぞは、一貫して「オイディプスの神話」を原案にしており、事件の犯行に繋がる趣向を凝らした答えが用意されている。
これを窓際族だった柴崎刑事はサクッと解いていき、さらには必要に応じて捜査に出たり、YouTubeに自ら出演して対抗したりと、とにかく渋くてカッコいいキャラクター造形となっている。
この辺りはさすが渡辺信一郎監督だな、とか思った。『カウボーイビバップ』の主人公であるスパイク・スピーゲルに通ずるものがある。
普段はタバコをふかして気怠けだが、本気を出すとめちゃくちゃ強いキャラってカッコイイよね。
”要らない子”だったヒロインが”必要”だった
本作の唯一と言ってもいいヒロイン・三島リサは、学校ではいじめを受け、家ではヒステリックな母親に苦しめられ、どこにも自分の居場所がなかった。”要らない子”だったのだ。
そして彼女は、家出してスピンクスのアジトに匿ってもらうのだが、ろくに料理もできず、挙句の果てにはスピンクスのテロ行為の足を引っ張る始末。
面白いくらい徹底的に”要らない子”として描かれていた。
傍観者である僕も「マジでこの女役に立たねぇなぁ…」とイライラした。いや、性欲処理には役立ちs(殴
しかし、そんな超が付くほどのポンコツヒロイン・三島リサは、本作には必要不可欠なキャラクターだったと思う。
本作の本質は、世界への復讐を掲げた犯罪者が暴れまわるピカレスクロマンだ。
ピカレスクロマンのラストは”主人公の死”と相場は決まっている。罪を犯した者は最後に罰せられるのだ。
本作のラストも例に漏れず、ダブル主人公・スピンクスの死だった。
スピンクスは最初からずっと、日本国家の闇が明るみになる事と、自分たちが生きていた事実を誰かに覚えていてもらう事を望んでいた。
最後に、前者の望みは柴崎刑事に託されたが、後者の望みは三島リサにも託された。
三島リサは、スピンクスの決して悪者ではないという正体、そして生きていた事を知る稀有な存在になった。そして彼女のなかにはナインとツエルブの残響があると...
作品的には「三島リサは必要だったよね」という結論になり、不要として描かれたキャラが必要だったというギャップが良い。
「なぜツエルブから殺されたの?」「スピンクスをあっさり殺しすぎだろ…」と不満な点もあるが、ちゃんと1本の物語として纏まっている。
ヒロインも可愛い。取り立てて文句はない。
冷たい菅野よう子氏の音楽
本作で注目したいのは、往年の名作『カウボーイビバップ』の監督×音楽コンビが手掛けているという点。
そう、音楽はあの菅野よう子氏が担当しており、寒い国(アイスランド)をモチーフにした儚い楽曲が目立った。
…と書いても、ほとんどの劇伴曲(BGM)は個人的にそれほど刺さらなかったのだが、
スピンクスの過去回想シーンで必ず流れる「lolol」という曲は非常に良かった(サントラではTrack1)。
激しくロックなギターの音が、延々と鳴り続ける。その頭が痛くなる響きは、スピンクスの残酷な過去を見事に表していたと思う。
けれど本作で一番良かった曲は、OP曲である「Trigger」。
尾崎雄貴さんが歌っているから「Galileo Galile」の曲かと思いきや、何をどう聴いても菅野よう子氏の作曲。
「生まれてから~死ぬまで」のサビ部分が好き。物悲しさと切なさをまとったOP映像も良かった。
Aimerさんが苦手なのでEDは...
まとめ:過激だが良作のピカレスクアニメ
まず本作を”フィクションの物語”だと念頭に置いて視聴するのが大切だが、どうやら評価と好みは大きく二分されているようだ。
『デスノート』や『コードギアス』の系統の作品が好きな人は、最後まで楽しめると思うし、面白いという感想に着地するだろう。
僕はお気に入り度は星3にしたが、その中でもかなり好きな方だった。
だが『デスノート』や『コードギアス』に比べてしまうと、ご都合主義が強く整合性に欠けて、評価としては下になってしまう。
ちなみに、内容や雰囲気が似ていると言われている『東のエデン』は、TVシリーズの最終回を投げたから嫌いである(キッパリ)。
それでは…この世界に、引き金をひけ。