異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメをネタバレ有りでレビューしていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、夏を舞台にしたアニメ『_summer(アンダーバーサマー)』をレビューしたい。
えっ?知らないって!? だよね...
『_summer』は2005年にHOOKSOFTより発売されたPC用18禁ADVゲームで、のちにPS2にも移植。
2006年に全2話のOVAとしてアニメ化がされ、記事執筆現在では各配信サービスで視聴が可能だ。
ちなみにAmazonPrimeの配信ページにはレビューが1件も書かれてない...
『_summer』作品情報
発売時期 | 第1巻:2006年10月27日 第2巻:2007年1月26日 |
話数 | 全2話 |
ジャンル | 恋愛/青春 |
アニメーション制作 | 陸演隊 |
『_summer』あらすじ・PV
「好きな奴、いるか?」
修学旅行の夜、親友の治が言った何気ない一言が海津匠のなかで何かを変えていく。「・・・・・十年先、二十年先、
俺達はどうなっているんだろう?恋人が出来たら、俺の横には一体誰が・・・・・。」幼馴染みの小奈美、義妹の沙奈、
妹の級友千輪とのいつもの朝食。学校ではクラスメートの信乃や先輩の若菜たちとの何気ない日常。匠の前に、いままで意識したことのない女の子の姿が徐々に変わっていく。そして七夕の夜、海津家恒例のパーティーが開かれることに。みんなが短冊へ願いを書き連ねていくなか、小奈美の願う秘められた想いとは・・・・・。
『_summer』スタッフ
原作:HOOK
監督:岡尾貴洋
脚本:如月一
キャラデザイン:内野明雄
作画監督:野田めぐみ
『_summer』キャスト(声優)
海津匠:近藤隆
波多野小奈津:柳瀬なつみ
海老塚信乃:梶田夕貴
天野千輪:ひと美
島津若菜:友永朱音
七緒日向子:野乃瀬ミオ
船田治:野島健児
川上由乃:小林恵美
落ち武者マスター:花田光
『_summer(アンダーバーサマー)』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 7 | 7 | 6 | 6 | 7 | 7 | 6 | 6 | 6 |
お気に入り度:★★☆☆☆
オススメ度:★★☆☆☆
やはり2話では尺不足
原作は物語が長尺で、かつ複数に分岐するエロゲーだ。
それをたった2話の短尺に収めるのは無理があると予想していたが、意外にも健闘している。
だがそれでもやはり、尺の不足が否めない。
ストーリーは、主人公とその友人の男キャラが女子風呂を覗くという唐突な所から始まり、若干の困惑を覚える。
が、1話の前半で各キャラクターの立ち位置や個性をしっかり紹介しているのは好感が持てる。
1話は七夕、2話は花火大会のお話。
ほのかに高校生ヒロインの恋愛フラグを匂わせながら、けれど特筆すべき恋愛沙汰は起きず、彼ら彼女らの日常と青春を描くほうに舵取り。
全体的には、原作から部分部分を切り取って詰め込んでいるように感じ、広くて浅いストーリーという印象だ。
また、出したは良いものの回収できてないキャラクターも存在し、「なぜ2話しかないのにキャラクターを出しまくるの?」とも思った。
尺さえあれば、より深くストーリーとキャラクターを描写できて、作品の完成度も上がったのだろうが。
2話しか作れないと分かっていたなら、メインヒロイン・柳瀬なつみ にだけターゲットを絞り、彼女のルートをみっちり描いても良かったのでは?…と考える。
『トップをねらえ!』のオマージュオチも弱い。
タイトルが意味するテーマ
タイトルに付く「_(アンダーバー)」とは、”ほんの少し手前”を意味する記号だ。
そして本作の時節は、まだ学校があるからおそらく、真夏が近づく7月ごろ。
メインキャラクターはみな幼馴染だが、高校生になって”恋愛”を意識し出したり、将来に向けて何かを始めたりと、それぞれが変わり始めている。
10年20年後はどうなっているのか分からない。だけどずっとこのまま仲良しだったら良いな...そう願うメインヒロインや主人公。
そんな”夏も恋も大人もほんの少し手前”の彼ら彼女らを本作は描いている。
まさしくタイトルが意味するところのドラマが展開されたわけだ。
視聴前はダサいタイトルだと思っていたが、ほんの少し手前(アンダーバー)を描くというテーマは、高校生の青春恋愛ドラマに相応しく素晴らしいテーマだと思う。
だがこれまた尺が足りてない関係上、テーマを十分に掘り下げられてない。
とても勿体無い。宝の持ち腐れである。
会話と設定に面白みがない
これが地味に辛かった。
よくあるギャルゲーの日常パートにありがちな会話を1グレードダウンさせたような、平々凡々な会話劇。
それが淡々と続き、時折暴力的なギャグシーンが挟まれるが、笑えるほどでもないという。
また設定に関しても、甘々で典型的なエロゲーだ。
キャラクターの設定を簡易的に説明すると...
- 無条件にモテる鈍感で平凡な主人公(大人びているだけが取り柄)
- 無条件にイジられる金髪の友人キャラ(ク〇ナドの春原やん)
- 両親不在で毎日料理しに来る隣の家の金髪幼馴染(完全無欠のメインヒロイン)
- お兄ちゃん大好きな義理の妹(義理なのが甘い)
- 男勝りな暴力系青髪ヒロイン(クラ〇ドの杏)
- 口数は少ないが色々ぶっこんで来る白髪ツインテ不思議系
- 世間知らずの黒髪ロング清楚お嬢様、とその付き添い美少女
- だらしないネタキャラの20代独身担任教師(&謎の黒板消し専用のちびキャラ)
そしてストーリーはピュアな学園純愛モノ(と謳っている)と来た!
独自性も真新しさもほとんど無し!! コッテコテの美少女ゲーム大好きオタクよござれ!!!…な感じ、良くも悪くも。
あと、喫茶店の落ち武者マスターのキャラクターは、もっと渋くて濃くても良かったと思う。
せっかく作品の本質となるテーマを平明なセリフで述べているのに、心にぐっと染みるような重みがない。
その他気になった点
- 声優さんの声とキャラクターの口パク、画面効果とSEがズレている箇所が少々ある。
目からの情報と耳からの情報が合致しない時の違和感はぬぐえない。引っ掛かりを覚える。
前者は声優さんのアフレコが下手なのか、それとも作画を合わせるのが面倒で諦めたのか。
後者は明らかに音響監督・編集の詰めが甘い。
- セリフやSEが入っているのにOPが使い回し
OPは専用の映像を作っておらず、主題歌が流れながらキャラクター同士の会話や物語が進行するタイプ。
だが1話・2話ともに、学校前(朝)の主人公の家からを物語の導入にしたことにより、巧みにOPを使い回すことに成功している。
たかが2話、されど2話。専用の映像では無いのだから、OPムービーは変えてほしかったなぁ。
まとめ:月並みの出来
元はDVDを買わないと観られないOVAなので、原作ゲームプレイ済みのファン向けアニメといった仕上がり。ED後の「おまけコーナー」とかまさしくファン向け。
特別酷くもなければ、チャームポイントもない。無名なのも易々と納得できてしまう。
もし気になったなら、原作ゲームをプレイした方が良いだろう。
絵は可愛いし、各ヒロインと甘々の純愛を楽しめるようだから、少なくともアニメよりかはクオリティが高いはず。
佳作~良作の範囲で面白いんじゃないか?と睨んでいる。