異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメをネタバレ有りでレビューしていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、2003年にWOWOWで放送されたアニメ『スクラップドプリンセス(通称、すてプリ)』の感想・評価・レビューだ。
原作は1999年~2005年に刊行されていたライトノベルで、シリーズ累計発行部数は213万部を記録する、いにしえの人気作。
原作者は『アウトブレイク・カンパニー』『棺姫のチャイカ』と同じ。
『スクラップド・プリンセス』作品情報
放送時期 | 2003年4月-10月 |
話数 | 全24話 |
ジャンル | ファンタジー/SF |
アニメーション制作 | ボンズ |
『スクラップド・プリンセス』あらすじ・PV
「やがて王妃の胎の内より出でし双子のうち、女児を誅すべし。その者、生まれ出てより十と六の歳月を経た運命の日、世界を滅ぼす者なり。世界の秩序を打ち砕き、混沌をもたらす猛毒なり。」
<聖グレンデルの托宣>がラインヴァン王国にもたらした不吉な預言により、一人の王女の運命が大きく変わる。生まれたばかりの王女は秘密裏に抹殺され、存在自体が王室の禁忌として封印された。
いつしか<廃棄王女>という言葉だけが残り、月日は流れていった。しかし<廃棄王女>は生きていた。
それがパシフィカ・カスールである。小さな村で義兄シャノン、義姉ラクウェルと平凡な生活を送っていた彼女だが、育ての父が死んでから、運命は大きく動き出す・・・。
『スクラップド・プリンセス』スタッフ
原作:榊一郎(富士見ファンタジア文庫刊、月間ドラゴンマガジン連載)
原作イラスト:安曇雪伸
監督:増井壮一
シリーズ構成:吉田玲子
キャラクターデザイン:小森高博
総作画監督:小森高博、工藤裕加
美術デザイン:竹内志保
デザインワークス :神宮寺一
美術監督:菱沼由典
色彩設計:岩沢れい子
撮影監督:宮原洋平
音響監督:菊田浩巳
音楽:七瀬光
プロデューサー:南雅彦、加藤淳、阿部祐督、根岸悟
製作:すてプリ製作委員会
『スクラップド・プリンセス』キャスト(声優)
パシフィカ:折笠富美子
シャノン:三木眞一郎
ラクウェル:大原さやか
レオ:近藤 隆
ウイニア:川澄綾子
クリス:水島大宙
ゼフィリス:水橋かおり
『スクラップド・プリンセス』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 7 | 7 | 8 | 8 | 7 | 7 | 9 | 7 | 7 |
お気に入り度:★★★☆☆
オススメ度:★★☆☆☆
静寂に包まれた物語
生まれつき世界を滅ぼす存在だとして、赤子のうちに廃棄された王女・パシフィカ。
しかし実は生きており、その事実を知った王国の追っ手から、育ての兄と姉とともに逃避行を続ける。
本作の物語を要約するとこんな感じだ。
廃棄された王女、廃棄王女だから『スクラップド・プリンセス』。
パシフィカ、シャノン兄、ラクエル姉の3人の旅路には、色んな出会いと別れがあり、その寄り道がてらのお話は”それなりに”面白い。
そして、その出会いと別れが後々の展開にも繋がり、ただの一本道な物語に終わらないのも良い。
だが、いまいち盛り上がりに欠けていると思う。
基本的にシリアスで、淡々とストーリーが展開されていくのだ。
もちろん激動の展開はあった。
たとえば第15話、スキッドの爆発で主人公・パシフィカが記憶喪失になり、人格ががらりと変わってしまい、ともに旅をしてきたシャノン兄、ラクエル姉と別々になってしまう展開。
あれだけ爆発が大きかったのだから、3人がバラバラになるのも分かるし、誰かの記憶がぶっ飛んでもおかしくないだろうと納得はできた。
だが、パシフィカの記憶がもとに戻る展開が雑。終盤のシリアスシーンで何の脈絡もなく急に戻るし、なぜ記憶が戻ったのか、説明や理由づけがなく意味不明だった。
結局このアニメは、記憶喪失展開で何をやりたかったのか?...と疑問が残る。
ただ2クール24話、いつもの3人を中心に物語を紡ぐのはキツイから、物語を膨らませて間を持たせるためのテコ入れ。
いわば、記憶喪失展開そのものをやりたかったとしか思えない。
また、パシフィカの人格が変わってしまっている間、パシフィカのお世話をしてくれたフィーレ。
彼の生きざまと死には、潜在的な感動ストーリーが秘められているのに、全くと言っていいほど感情を揺さぶられなかった。
もっと感情移入させて、死に際のシーンの演出を磨けば、感動できたはずなのに。
おちゃらけた日常パートもそれなりにあるが、どうしても静かで面白みがなく、シリアス展開の方が目立って面白いのである。
アニメオリジナルのラストとこの世界
終盤もやっぱり盛り上がりに欠ける。
ラスボスが弱い。
世界を破壊してリセットする装置であり、神に近い存在のはずなのに、脅威とか強者感があまり無い。
ロボアニメのロボットのビームくらいの攻撃力で、攻撃をしても建物が数十棟破壊され、王国の塔は部分的に倒壊するだけ。
本当にコイツが世界をリセットできるのか? 何時間掛かるんだよ?...と嘲笑ってすらいた。
一撃のビームで一国が消滅するくらい、大胆に誇張してやってもらわないと。
それでパシフィカ陣営は、シャノン兄がゼフィリスの力を借り、第11話で偶然出会った仲間(ドラゴンに変身する)と協力して、敵に立ち向かう。
舞台は宇宙へと飛び、剣や魔法によるつばぜり合いはなく、ドラゴンと兵器による謎に壮大な超次元の戦い。
メインキャラ補正なのか、なんかよく分からないけど勝利して、パシフィカは無事死から逃れてTHE・END。
最終回という事で、ドラゴンや兵器の描き込み、戦闘シーンの動画に力が入っていたのはとても良かった。『ガンダム00』の戦闘シーンを連想したよw
また、放送当時に原作は完結していなかったにも拘わらず、アニオリ展開を入れ、全24話で1つのアニメ作品として完結させたのは評価できる。
このブログで何度も言っているが、”とりあえず”で終わらせて、続きが知りたきゃ原作を読め!...と放り投げるアニメが僕は好かない。
過酷な運命を背負ったパシフィカが報われ、家族愛(兄弟愛)のテーマが押し出されたのも良かったよ。終盤はなんかよく分からなかったけど。
あと、専門用語がかなり登場したが、意外にも置いてきぼりを喰らわずに観ることができた。
しかし、まさか神様たちが文明レベルを弄られるようになった未来のお話で、本質はSFだったとは...
第一印象は完全に、オリジナル世界の純度100%ファンタジーじゃん! これが叙述トリック!
ファンタジーとSFが合わさった剣と魔法の世界で、『テイルズ』などのRPGの大冒険のようでもあった。
低コストな作画
全24話通して目を引いたのが、キャラクターの胸元から下を極力描かない映像づくり。
キャラクターの作画は、手を描くのが一番難しいと言われており、また頭から足までの全体像を描くのはかなりの高コストである。
本作のとくに会話がメインのシーンでは、キャラクターの顔周りアップが多く、口や髪くらいしか動かない。
またキャラクターの全体像を映しても、振り向く、髪や服がなびく、首が動く、表情が変わる程度の動きで抑えている。
しかし、ちまちまカットとカメラアングルを切り替えることで、映像に”動き”を出しているのだ。
なるべく手を抜・・・作画コストを減らすべく、絵コンテの段階から上手いことやっているなぁ~、と思いながら観ていたw
2000年代前半の深夜アニメは、わりとこういった低コスト作画が目立つ作品が多い。
2006年の『涼宮ハルヒ』以降、深夜アニメでも動かしまくる作品が増えた印象である。
映像に関しては、とにかく時代を感じた。
「JAM PROJECT」のOPが名曲
OPは非常に素晴らしい!!!
JAM PROJECTによる「Little Wing」は、勇ましいステップで新しい1日を感じられる、朝日のように輝かしい曲だ。
それに合わせて映像も、陽が昇る早朝、1日の旅の始まりを描いており、本作一番の映像美に仕上がっている。
全体的に、これから仲間との冒険が始まるぞ!…という気分にさせられて、本編の視聴意欲が高まる。
これこそアニメのOPのあるべき姿だろう。
ちなみに僕はこのOPを見て、本編を視聴しようと決意したほどだ。
まとめ:ラノベ原作ファンタジーアニメの凡作
制作陣の熱意や本気はあまり感じられない、淡々と地味な凡作アニメである。
本作の放送当時、ボンズは裏で『鋼の錬金術師(旧TVアニメ版)』を制作&放送していたから、おそらくそっちにリソースが割かれていたんだろうなぁ。
第1話が一番面白いと思うし、2話で1エピソード構成の前半までは普通に面白いアニメとして観れる。後半は視聴する側がダレて辛くなる。
それでも2クール耐えられるよ!...という人が観るべきであろう。