異種族の風俗をファ〇通レビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメをネタバレ有りでレビューしていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、フジテレビ「ノイタミナ枠」で放送されたTVアニメ『平穏世代の韋駄天達』の感想・評価・レビューである(考察めいたことも多め)。
元々は『異種族レビュアーズ』の天原先生がアマチュア時代に発表した漫画で、2018年に『小林さんちのメイドラゴン』のクール教信者先生を作画に迎えて商業化された。
こうして『異種族レビュアーズ』をパロってアニメレビューを書いている身としては、無視できない作品だ!
- 『平穏世代の韋駄天達』作品情報
- 韋駄天 VS 魔族 のパワーバランスが面白い!
- ぶっ飛んだスケール感
- ブツ切りエンドが悲しい
- インモラルなエロティック描写
- 実は社会風刺アニメ
- ビビッドな色遣いと、暴力的なバトルシーン
- モダンでポップなOP・ED
- まとめ:優秀すぎるアニメスタッフ達
『平穏世代の韋駄天達』作品情報
放送時期 | 2021年7月-9月 |
話数 | 全11話 |
ジャンル | ダークファンタジー/バトル |
アニメーション制作 | MAPPA |
『平穏世代の韋駄天達』あらすじ・PV
“韋駄天” × “魔族” × “人類” 何が起こるか誰にもわからない、禁断のバトルロワイアルがいま始まる―!!
壮絶な戦いの末、圧倒的な速さと強さを誇る戦いの神々「韋駄天」が世界を破滅に導く「魔族」を封じ込めてから800年。今や“あの戦い”は遠い神話の中の昔話でしかない。
生まれてから一度も戦ったことのない「平穏世代の韋駄天達」が平和ボケしている中、何者かにより、再び魔族が長い眠りから復活させられた―!?
武力、智略、政治、陰謀、使えるものはとにかく何でも持ってこい!
ノールール&ノーリミットな三つ巴のバトルロワイアルがいま始まる!!
『平穏世代の韋駄天達』スタッフ
原作:天原・クール教信者「平穏世代の韋駄天達」(白泉社「ヤングアニマル」連載)
監督:城所聖明
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:大津直
総作画監督:大津直、北尾勝
コンセプトアート:スカイエマ
美術監督:田村せいき
色彩設計:鎌田千賀子
3DCGディレクター:金子拓磨
撮影監督:加納篤
編集:柳圭介
音響監督:長崎行男
音楽:出羽良彰
『平穏世代の韋駄天達』キャスト(声優)
ハヤト:朴璐美
イースリイ:緒方恵美
ポーラ:堀江由衣
リン:岡村明美
プロンテア:石田彰
ギル:伊藤静
ピサラ:瀬戸麻沙美
ニッケル:上坂すみれ
コリー:石上静香
ネプト:天田益男
ミク:伊瀬茉莉也
ブランディ:本名陽子
タケシタ:宮本充
オオバミ:チョー
『平穏世代の韋駄天達』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 10 | 9 | 8 | 9 | 8 | 8 | 9 | 8 | 8 |
お気に入り度:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆
韋駄天 VS 魔族 のパワーバランスが面白い!
本作は、韋駄天(神的な存在)と魔族(韋駄天以外、人間もこちら側)、2つの勢力が戦いを繰り広げるアニメだ。
韋駄天側は、世界最強の戦闘力を持つリン(SSS)、その一番弟子に当たるプロンテア(SS)、リンに今一番鍛えられている主人公的ポジション ハヤト(S)、大量の情報と人脈を持つ頭脳明晰なイースリイ(A)、ヒロイン枠だけど戦いもござれなポーラ(A~B)。
戦闘力SSS~A級が勢揃いで、たった少人数で大量の魔族を相手にする。
他方の魔族側は、機会の体で登場する不死にも近い存在のオオバミ博士(S~A?)、観察力と頭の回転に優れたミク(S~A?)、ぱっとしない見た目なのに実は強い皇帝タケシタ(S)、髪の毛を操って武器とする皇妃ブランディ(S)など。
こちらは一番強くてもS級。大体の魔族はA~B級だ。
この2勢力の争い。
最初は、チート能力を持つ神と呼称しても差し支えない「韋駄天側」があまりにも強すぎて、ワンサイドゲームになってしまうのではないかと思われていた。
平和ボケしていたのに、どんどん魔族に攻め入っては洗脳で仲間を増やし、やがて魔族の住むゾブル帝国を滅ぼしてしまうからだ。暴力による単純な戦闘力は韋駄天達が終始圧倒的である。
しかし、普通に戦えば勝てないと知った「魔族側」は、戦略と戦術でじわじわと押し返す。
魔族側には、この世界で一番頭のキレるであろうミクがいて、何体かの魔族はゾブルの滅亡から逃れていたのだ。魔族の全滅は避けられた。
そして終盤はほとんど「イースリー VS ミク」の頭脳戦で、中盤までの拳がぶつかり合う戦闘はどこへやら。
最終回はむしろ、魔族側がかなり優勢なんじゃ?…と思えてしまうような戦局に。
だが、韋駄天側も簡単には引き下がらないだろうという予感があり、結局最後まで観てもどちらが勝ちそうなのかは分からず...
正直観る前は、ただ殴り合いバトルをするだけの『ドラゴンボール』劣化コピーかと思っていたが、こうも賢く頭を使って戦うとは。
ただ力が強いだけじゃ勝てない。力と頭脳をかけ合わせて戦力となるからこそ、一筋縄ではいかない駆け引きが面白かった。
ぶっ飛んだスケール感
スケール感がデカいのも面白い。
リンは800年前に一人きりになった後、50年逃げ続け、350年修行に明け暮れ、その後プロンテアを200年間鍛え、封印から600年が経過して初めて平和を実感したとか。
リンのちょっとしたパンチでハヤトが崖を砕いてぶっ飛ぶとか、とんでもなく大きい岩を頭で受け止めるとか。
年単位やパワーが果てしなさすぎて、「あっ、コイツらとんでもない奴らなんだな」と直感的に瞬時に分かる。
あと、このぶっ飛んだ世界観を解説する、長い長い「説明セリフ」が早回しにされているのが斬新だった。
説明セリフほど退屈なものはないし、無数のコンテンツが生み出され消費される現代に即しているアイデアだ。
ただし、聞き取りづらい。
ブツ切りエンドが悲しい
最終回、イースリーとポーラが実験体として捕まり、身体を切断されていくさまは、観ていてなんだかとても悲しい気持ちになった。
でも痛覚がないから平気でしょ?...と容赦なく韋駄天を切り裂く魔族たち。グロテスクだ。
しかし一人だけ、洗脳を解かれたはずなのに、ポーラの悲しげな目にうろたえる魔族が。
絶望的な状況に置かれたイースリイとポーラを、この魔族が救うのか!?洗脳が解かれたほかの魔族も、何かが残っていて韋駄天達に感情移入してしまうのか!?
そして、いま韋駄天側に勝ち目はないが今後どうなる!?…という所で終了。
ブツ切り感がすごい。
どうやら原作もここで止まっているようだが、アニメスタッフ側でもっと綺麗にまとめられなかったのか?...と考えたけど、まあ無理だろうな。
締まりが悪くなりがちなのは原作モノの宿命。原作ストックの浅い段階でアニメ化に踏み切ったことが痛手になってしまっている。
どうにも先が気になって仕方ない心境に置かれたので、これはもう2期をやるしかないよ制作陣。
でも、原作の連載ペースやアニメの売上を鑑みるに、続編など到底期待できそうにない...
ちなみにラストは、韋駄天達と魔族が話し合いで和解するという平和的解決になるのではと予想している。
両者話し合いができないから戦っているわけではないし、これから恋愛チックな要素が絡んできそうだし、この作者はハッピーエンドを用意しそうだし。
インモラルなエロティック描写
バトルアニメである本作は、流血や切断などのグロテスクな描写だけに飽き足らず、とんでもなくエロティックな描写も投入してくる。
それはあまりにも不道徳で、倫理観がイカれている。
しかしそれは人間の倫理観から観た感想であり、頭を柔らかくすれば「人から外れた韋駄天と魔族たちが住む世界はこういう倫理観なんだな」と捉えることもできる。
まず衝撃的だったのが第1話のラスト、戦火のなか神にお祈りしていたシスター・ギルティーナがゾブル兵に輪姦されるシーン。
加害者側の兵士を回しながら1人ずつ見せ、”輪”姦を表現するのは斬新だw
また、ゾブル帝国では、戦禍なら兵士は何を奪ってもよいとして軍隊の指揮を保っている...というなかなか納得力のある設定がある。
そのゾブル帝国の実情を先んじて紹介するシーンでもあるのだ。そうだよな、そういう褒美がないと誰も兵士をやりたがらないよな、やっぱり男は獣なんだな...
ちなみにこのシスター、第5話でもミクに弄ばれる...絶頂をお預けにされたシスターは正直可愛かった。
第2~4話は真面目にバトルアニメをやっていたのに、その第5話では又もやエロティックな描写が顔見せ。
イースリイ VS ピサラ大将の戦闘シーンにて、ピサラ大将の上がはだけて、媚薬入りのガスでいたぶられてしまう...
だがこれも、戦闘に勝つための知的なイースリイの策略。かなり艶めかしいとはいえ、イースリイの戦略勝ちを見せつける爽快なシーンだ。
最終回でもお代わりと言わんばかりに、シャワー中のピサラ大将が媚薬にやられる。
強情でガード硬そうな女の子が媚薬で否応なく快楽に堕ちるのってイイよね。やはり乙女は恥じらいがあるべき。
ここから歯止めが効かなくなり、第6話ではミクの自慰を見せつけられ、
つづく第7話では、ゾブル帝国が韋駄天達に対抗するための兵士を増やすべく、強姦されて妊娠した女性をかくまって子を産ませている部分を描写。
まるで「赤ちゃん製造工場」である。エグい。
「生まれた子は国が責任を持って、皆さんに乱暴したような立派な兵士に育てますから」というメルクゥの恐ろしいセリフが、この状況のエグみをさらに増幅させる。
だがここで、ゾブル帝国に韋駄天達が即攻めてくる。
ゾブル帝国は崩壊したが、なんとか逃亡に成功したミク、メルクゥ、ウメヨの3人。
ミク一行は、ウメヨが体内で融合中の赤ん坊を、将来子作りの相手にするべく育てることを決意。
第9話以降は、新しい拠点で赤ちゃんを産み、普通に子育てをして、やがて色んな意味で立派な男児に成長するまでの流れが描かれる。
生まれて数年で性教育の英才教育。エグすぎるオネショタ。
そして個人的に一番お気に入りなのが、第10話の冒頭、イースリイがピサラ大将の口内を覗くシーン。
う~むけしからん!けしからんすぎて10回近くリピート再生したぞ!!
女の子の口内なんてなかなか見れるものではないからなぁ...
後述するエンディングのおかげもあり、一番気に入っているキャラクターはピサラ大将だ。率直に可愛い。
#平穏世代の韋駄天達 1話視聴
— たゆすと@はてなブログ (@Heiho_tayutari) 2021年7月29日
バトルアニメとしては一流のアクション作画が目を引く。色彩も内容もド派手でえげつない。これは面白いぞ…
そして僕はヒロインのたった一瞬のパンチラを見逃さなかった!
終盤のレ〇プシーンは人間の醜さを表したかったのだろうか? グロだけでなくエロもあり。 pic.twitter.com/5R1yuYtrKO
具体的に取り上げて言及することは避けたが、ほかにも、
ロングスカートでパンチラ、逃れた魔族が子作りをしてバケモノを産んでしまう、手足を切断された少女の肛門に手を突っ込むなど、非常に風変りで攻めた描写が散見される。
これらすべてが、あの『異種族レビュアーズ』を描いた原作者・天原先生の天才としか形容できない性癖というか変態性である。
この『平穏世代の韋駄天達』でも、天原先生の天才的な変態性は存分に発揮されていた。
...が、1つだけツッコミさせてくれ。
ノイタミナ枠の「普段あまりアニメを観ない人にも観てもらう」というコンセプトには合ってないよね!?
『ハチミツとクローバー』や『坂道のアポロン』を放送していた頃のノイタミナはいずこへ。
ノイタミナの名に恥じぬ高水準のクオリティーに仕上げて、ノイタミナアニメとして打ち出しているのに、放送枠がノイタミナであることが一番の間違いという皮肉...
実は社会風刺アニメ
原作の天原先生とクール教信者先生の作品に共通しているのが、
異なる者同士の関わり合いを取り上げて、現代の人間や社会をちょいと皮肉ったような描写・セリフを随所に散りばめる点。
本作も例外ではなく、やはり異種間の関わりを通して人間の汚い部分を風刺的に描写するシーンが目についた。
第1話の輪姦シーンは言わずもがな、第7話では宗教国家・サラバエルに対して
「この国も神の名を使い、好き放題やってるだけだろ。あなた方は神の権力を使い、富を築いているだけだ」というセリフをイースリイが吐いた。
ビジネスで宗教をするインチキ詐欺師(最近だと、胡散臭いオンラインサロンを開設したり、noteで情報商材を売ったりするような人)を論破してスカッとするが、説教臭さもある。
そしてタイトルの『平穏世代』の部分なんかは、戦後に生まれてきて平和ボケしている僕らを皮肉っているんだと思う。
生まれてから一度も戦ってこなかった韋駄天達=生まれてから一度も戦争を経験してない僕達
だがしかし。
エロ規制に厳しい時代だからこそ、インモラルなエロ表現に果敢に挑戦していく。
これが本作イチの社会風刺というか、社会への喧嘩売りだろう。いいぞもっとやれ。
ビビッドな色遣いと、暴力的なバトルシーン
本作を映像の観点から見ると、なによりも”色遣い”が素晴らしい。
シーンによって色彩が異なるのが新鮮である。
通常時は明度が高くてカラフルなイメージだが、寒い場所や暗い場所などのシリアスなシーンでは、明度が下がりダークな雰囲気に。
しかし一貫して彩度は高いので、全体的にはポップでビビッドな印象が残り続ける。
色彩設計が非常に優秀だ。それに色彩設定や色塗りの仕事が分かりやすい。
それから映像に関連付けて、バトルシーンの作画が暴力的なまでにコストが掛かっている。
ついでみたいな言い回しだけど、やはり本作の一番の魅せ場はバトルシーンだから。
「さすがMAPPA」の一言に尽きる。
泡が舞うようなCM明けや、地面などの背景に同化させるサブタイトルの出し方もオシャレだ。
とくに第8話のサブタイトルの出し方はカッコよかった。そこで!?ここに!?!?
モダンでポップなOP・ED
輪廻するオープニング「聖者の行進」
本作のオープニングは、とにかくキタ二タツヤさんの楽曲が作品にハマっている。
キタ二タツヤさんが作る曲は社会を鋭く風刺するものが目立つから、それもそのはずである。
また、キャラクターの身体を使って好き勝手ぐちゃぐちゃにしている映像は、生死を輪廻する”韋駄天達”が活躍するこの作品を象徴しているなと思う。
ただ可愛いエンディング「雷火」
オープニングの方が100万回多く再生されているが、僕はエンディングの方がしゅき。
魔族側のピサラ大将、ミク、メルクゥの3人にフォーカスを当てているものの、あまりにも作品本編の世界観と乖離しているw
普通に起きて歯を磨いたり、ショッピングを楽しんだり、クレープを食べて自撮りしたり、結婚に憧れたり...まるで平和な現代に生きる若者だ。
これはおそらく「平和な現代にこの3人が生きていたら」というifを描いているのではないか?
ラストは、ピサラ大将のイースリイに対する想いをウエディングドレス越しに暗示(?)。
ピサラは頬を赤く染めるも、それを隠すように深く帽子をかぶり、心拍数を高ぶらせて去っていく。
あれ!?この作品ってラブコメだった!?...と錯覚してしまうような可愛さがある。
ピサラ大将がイースリイを意識する描写が第10話まで無かったので、終盤まで観てようやく意味を理解できるエンディングだなと思った。
まとめ:優秀すぎるアニメスタッフ達
僕はアニメしか観てないので全て憶測だが、「原作はそんなに面白くないけど、アニメスタッフが優秀すぎるおかげで面白くなったタイプのアニメ」だと思う。
原作の面白さというより、アニメスタッフの優秀さが伝わってきた作品だった。原作者の変態性は伝わってきたけれども。
だから、なぜこんなにも優秀なスタッフがこの原作でアニメを作ったの!?...と思わなくもないw
一方で、原作が優秀なのにアニメの出来が酷かった作品を見ると、やはりアニメ化は「制作会社ガチャ」なんだなとつくづく思う。
一般ウケはしないし、絶対に人を選ぶ。エログロ耐性が無い人は避けるべし。
しかし、この世界観を不快に思わず耐性もある”選ばれた人”にはとことん刺さる。そんなアニメだろう。
どうやら僕は選ばれたみたい。