異種族の風俗をファ〇通レビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメをネタバレ有りでレビューしていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、2003年にNHKのBS2で放送され、その後幾度も再放送や配信がされているアニメ『プラネテス』の感想・評価・レビューだ。
現在『ヴィンランド・サガ』を連載する幸村誠先生が「モーニング」で1999年~2004年に連載した漫画が原作。
『無限のリヴァイアス』『スクライド』を手掛け、のちに『コードギアス』を生み出すスタジオ・スタッフが主体となり制作された。
筆者はここまでに挙げた4作品はすべて視聴済みだが、原作は未読。アニメは1周しか観ていない。
『プラネテス』作品情報
放送時期 | 2003年10月-2004年3月 |
話数 | 全26話 |
ジャンル | SF/お仕事 |
アニメーション制作 | サンライズ |
『プラネテス』あらすじ・PV
時は西暦2075年。人類は宇宙開発を推し進め、巨大な宇宙ステーションや月面都市を建設するまでになっている。地球、ステーション、月面の間には旅客機や貨物機が行き交うようになり、人々にとって宇宙は、遠い世界ではなく日常の世界になりつつある。
この時代、大きな問題となっているのは、宇宙開発にともなって発生するゴミ(デブリ)。使われなくなった人工衛星、ステーション建造時に出た廃棄物などのデブリは、地球周回軌道上を高速でまわっている。2068年に起きた高々度旅客機アルナイル8型とデブリの衝突事故は、多くの死傷者を出す惨事となり、デブリ問題が注目されるきっかけとなった。
主人公・星野八郎太(ハチマキ)は、宇宙産業の大手・テクノーラ社の社員。デブリ回収船トイボックスに乗り込み、仲間のフィーやユーリとともにデブリ回収の任にあたっている。ハチマキを中心に、新入社員タナベの登場、宇宙開発に反対するテロ組織「宇宙防衛戦線」の暗躍、木星往還船フォン・ブラウン号の建造など、様々なドラマが描かれてゆく。
『プラネテス』スタッフ
原 作:幸村 誠
企 画:内田健二、上埜芳被、松本寿子
監 督:谷口悟朗
シリーズ構成・脚 本:大河内一楼
キャラクターデザイン:千羽由利子
コンセプトデザイン・設定考証:小倉信也
メカニカルデザイン:高倉武史、中谷誠一
美術監督:池田繁美
色彩設計:横山さよ子
撮影監督:大矢創太
編 集:森田清次
音響監督:浦上靖夫
音 楽:中川幸太郎
プロデューサー:河口佳高、湯川 淳、植原智幸
製 作:サンライズ、バンダイビジュアル、NHKエンタープライズ
『プラネテス』キャスト(声優)
ハチマキ:田中一成
タナベ:雪野五月(現:ゆきのさつき)
フィー:折笠 愛
ユーリ:子安武人
課長:緒方愛香
ラビィ:後藤哲夫
エーデル:伊藤舞子
ドルフ:加門 良
クレア:渡辺久美子
チェンシン:檜山修之
リュシー:倉田雅世
ギガルト:若本規夫
ナレーション:小林恭治
『プラネテス』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 9 | 9 | 8 | 9 | 9 | 8 | 10 | 8 | 9 |
お気に入り度:★★★☆☆
オススメ度:★★★★☆
意外と現実的な未来
本作は、人と宇宙の距離が近い近未来を舞台としているが、
現代ではあまり問題視されない「スペースデブリ(宇宙ゴミ)」に注目して、その「スペースデブリ」を回収する業者をメインキャラクターに据える...という着眼点がまず面白い。
「ネジ1本すら宇宙では凶器になる」。その言葉とその言葉がもたらすエピソードは、綺麗事を寄せ付けない現実的な世界観を見せつけ、作品世界に惹き込んでくれた。
それにしても、第1話冒頭のネジが旅客機にぶつかる演出は完全に『スクライド』だったなぁ...
オリジナリティあふれる設定の数々も面白みがある。
月で生まれ育った「ルナリアン」や、宇宙の低重力下で暮らしていると肉体が弱化する「低重力障害」など。聞いたことがない専門用語なのに、すっと頭に入ってくるし納得力がある。
主人公・ハチマキたちが働く「テクノーラ社」も、意外とお役所仕事だったり、上司が変われば事業部の体質も変わったりと、ちゃんと大企業だった。
ストーリーもずっと面白い。とくにデブリ回収のミッションが始まるとすこぶる面白いのである。
そして2クール全26話を通して、底のない宇宙の魅力と恐怖、人類が宇宙に進出することによる恩恵と弊害、2つの面をミクロからマクロまで秀逸に描いている。
その中には、人種差別や貧困などの社会問題、政治、夢への憧れと挫折、仕事の悩みや葛藤、生と死、笑い、哀しみ、人情、友情、愛...色んなテーマとメッセージが詰まっている。
それぞれのキャラクターにも人生がある。重みがあって刺さるセリフもたくさんあった。
スマホの登場やAIによる自動化を想定してない未来を描いているけど、2075年の人類はこうなるのかもなぁと思える。
そんな世界が確かに広がっていたのだ。
あとこれは余談だが、ポルノグラフィティの「アポロ」と「ヒトリノ夜」という曲が、この作品とものすごく合っているように思う。
前者は「僕らのこの街がまだジャングルだった頃から 変わらない愛のカタチ探してる」というフレーズ、後者は「想像していたよりもずっと未来は現実的だね 車もしばらく空を走る予定もなさそうさ」という詞がとくに。
どれだけテクノロジーが進歩しても、人が恋や愛に翻弄されるのは変わらない。両者そんなメッセージが秘められているからだろうか?
ヒロインが魅力的ではない
本作のメインヒロインである「田名部 愛」、通称「タナベ」。
自己主張が激しく、頭が悪いのに真面目で融通が利かず、ガサツでドジで、愛とか上辺だけの綺麗ごとを並べ立てて...
可愛い気がない。キャラデザや衣装だって可愛くない。
ガサツな女性を演じさせたら右に出る者がいない雪野五月さんの演技が上手いから、余計に...
徐々に慣れることはできたが、最初は彼女の言動にイラついていた。
だからハチマキとタナベ、2人が惹かれ合うドラマは展開として理解できるが、共感はできなかった...
彼らが幸せならそれでいいんじゃない?
また、ほかの女性キャラクターも、実際には美人かもしれないが、アニメ的には可愛くない。
萌えとは無縁で、洋ゲーのヒロインを見ている感覚。
この「ヒロインが魅力的ではない」要素が、僕がこの作品を完璧に好きになれない理由だったりする。
しかし、ヒロインが可愛くなければ作品を評価しない!...なんて事はしない。
それに裏を返せば、ヒロインの可愛さやエロに頼らず、面白さで真っ向勝負している作品という事だ。
映像面について
映像はとにかく動く。
キャラクターの表情や目つきが豊かだったり、後方でキャラクターがぐるぐる浮遊していたり、メカや宇宙服の作画がすべて手描きだったり。
細やかな部分まで手を抜かずに拘っているのは深く感心した。
粗や使い回しが目立った『無限のリヴァイアス』『スクライド』とはカネの掛かり方が違うのが伺える。
また演出については最終回、しりとりでプロポーズするのが最高にオシャレだったね。
素晴らしい演出は枚挙に暇がないが、これだけはスルーできなかった。
酒井ミキオのオープニング・エンディング
本作のOP・EDを手掛けたのは、谷口悟朗監督の前作『スクライド』でもOP・EDを担当した「酒井ミキオ」氏。
『スクライド』のOP・EDは、歌詞がフワフワしていて何を伝えたいのか分からず、正直”ダサい”と思っている。
だけれど、本作『プラネテス』のOP・EDは良かった。めっちゃ成長してるやん!『スクライド』の頃の酒井ミキオはどこに行った!?...と思ってしまうくらいに(何様)。
とくにOP曲の「Dive in the Sky」。
相変わらず抽象的でカッコつきそうな言葉が多いが、歌詞のまとまりに磨きがかかっていて、心に響くフレーズがたくさんある。
作品では流れないが、2番の「憧れが最上のエネルギー」の詞なんかはハチマキを表しているなと。
ピアノの音色や、サビ前で静寂が訪れるアソビも宇宙を存分に感じさせる。
まとめ:惑う星と人々と、惑わない名作
この作品を観て色んなことを感じて考えたけど、それら全てを書き連ねると蛙鳴蝉噪な文になってしまう。
そう危惧して具体的な言及は避けたが、 僕が言いたいことは ⇧この短文にまとまっている。
2022年1月からはNHK Eテレで再放送が始まる。各サービスで配信もある。原作コミックも全4巻だ。
どんな形でもいいから、一回は触れてほしい。
アニメをよく観る人も、普段アニメをあまり観ない人も。年齢や国籍さえ問わない。
いつになっても誰もの心に響くであろう、揺るぎのない名作だ。