異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想・評価レビュー・紹介&解説などを行う「アニメレビュアーズ」。
今回は、『Angel Beats!(以下、AB!)』『Charlotte』に続き、アニプレックス × Key × P.A.WORKS のタッグで贈られるオリジナルアニメ『神様になった日』の感想・評価・レビュー。
記事執筆現在は麻枝准とKeyの最新作だが、結論から言えば「酷い」「つまらない」の二言で片付いてしまう。
その前に...僕は「Key」が好きだ。
歴代のKeyアニメと僕の関係は以下の通りである。
Kanon(京アニ版) ⇒ 泣いてない
AIR(京アニ版) ⇒ ボロクソ泣いた
CLANNAD(京アニ版) ⇒ ボロクソ泣いた
リトバス⇒ 泣いた
AB! ⇒ 泣いてない
Charlotte ⇒ 泣いた
※『planetarian』『Rewrite』は観てない
『AIR』は初めてBlu-ray BOXを購入したし、『Charlotte』は賛否両論多かったものの僕は好きだったし、ブランドとしてのゲーム最新作『Summer Pockets』は発売日に購入してその年の夏休みに全ルートクリアした。
それくらい筆者は「Key」のファンであることを、まずは承知して頂きたい。
また、本稿は特定の個人や団体を批判するものではなく、純粋に作品を観て思ったことを書いただけであることもご理解頂きたい。
『神様になった日』作品情報
放送時期 | 2020年10月-12月 |
話数 | 全12話 |
ジャンル | ファンタジー |
アニメーション制作 | P.A.WORKS |
『神様になった日』あらすじ・PV
彼女が神様になった日、
世界は終焉へと動き出した――高校最後の夏休み、
大学受験を控えた日々を送る成神 陽太の目の前に、
ある日突然「全知の神」を自称する少女・ひなが現れる。「30日後にこの世界は終わる」
そう告げるひなに困惑する陽太だったが、神のような予知能力を目の当たりにし、その力が本物だと確信する。
超常的な力とは裏腹に天真爛漫であどけないひなは、なぜか陽太の家に居候することが決まり、2人は共同生活を送ることになる。
「世界の終わり」に向けて、騒がしいひと夏が始まる。
『神様になった日』スタッフ
原作・脚本:麻枝 准(VISUAL ARTS/Key)
監督:浅井義之
キャラクター原案:Na-Ga
キャラクターデザイン・総作画監督:仁井 学
美術監督:鈴木くるみ
撮影監督:梶原幸代
色彩設計:中野尚美
3D監督:鈴木晴輝
編集:髙橋 歩
音響監督:飯田里樹
音楽:MANYO・麻枝 准
『神様になった日』キャスト(声優)
ひな:佐倉綾音
成神陽太:花江夏樹
伊座並杏子:石川由依
国宝阿修羅:木村良平
成神 空:桑原由気
神宮司ひかり:照井春佳
天願賀子:嶋村侑
成神時子:柚木涼香
成神大地:新垣樽助
鈴木央人:重松千晴
CEO:井上喜久子
尾熊雷太:松田健一郎
『神様になった日』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 9 | 7 | 8 | 8 | 6 | 6 | 6 | 7 | 7 |
お気に入り度:★★☆☆☆
オススメ度:★★☆☆☆
ギャグアニメになった日
早い話、僕の感想はネット上に溢れてるものとそう大差ない。
まず、いつなっても話が動かないのだ。ようやく話が動き出したなと感じれたのは第8話。
Keyの麻枝准氏が原作・脚本なので、ある程度どういうシナリオが展開されるのかも予想できていたから、序盤はキャラクターたちの日常を描いてユーザーに感情移入させようとして来るのも分かり切っていた。
だが、あまりにも日常パートが多くて長い。
この間に『神様になった日』の作品世界に感情移入できたならそこまで批判することも無いのだが、僕は到底感情移入することができなかった。理由は二つ。
一つ目の理由は、キャラクターたちの他愛もない日常というより、吉本新喜劇のようなコントをずっと見せられている気がしたから。
ギャグこそはいつもの”麻枝節”が存分に発揮されており、相変わらずギャグセンスは高いなと思う。
そんな脚本に乗せた映像や声優さんの演技もキレがあって面白かったし、プレスコの長所が現れていて良かったと思う。通常シーンとギャグシーンのメリハリは大事だ。
だが、ギャグが1クール尺の大部分を占めているのは如何がなものか。
これでは主人公や作品世界への感情移入よりも明らかに”笑い”を誘っており、ほぼほぼただのギャグアニメである。
とりわけ問題児だと思っている第4話(麻雀回)はそれが顕著に表れていた回だった。
前作『Charlotte』でいう所のぶっ飛んでいた野球回の位置に当たるのだろう。
やけにインパクトだけは強く、UNOのルールで麻雀をやっちゃうなどの発想自体は好きだ。
がしかし、変な言葉の羅列を大声で叫んだら面白いでしょ?って感じがし、大声を出せば面白いと思っている三流芸人を見ているような感覚に苛まれて、いまいち面白さを見い出せなかった。麻雀のルールをよく知らないってのもあると思う。
個人的にギャグに関しては、もっと抑えて序盤から段階的に本筋のシナリオを積み上げて行ってほしかったが、いっそのことギャグアニメに振り切っても良かったんじゃないかと思ったり。笑いすぎて泣かすっていう...
また話題の本線とはズレるが、この回で登場した芸能人・天願さんというヒロインは果たして必要だったのだろうか?
あまりキャラクターの掘り下げが行われなかった故に魅力を全く感じることができず、彼女がこの作品に存在することで物語厚みができたとはどうしても思えない。
ちょっと美人でオトナな女性を入れときゃ良いっしょ?…という、萌ブタに甘えて取って付けた感がとても鼻についた。
こんなお粗末な扱いをするなら最初から不要だし。無駄要素だし。
二つ目の理由は、「30日後に世界が終わる」という掴みに日常が阻害されたから。
第9話で真実が明かされるまではてっきり「世界が終わるのは本当で、ひなが生贄になって世界の終末を止める」というシナリオなんだと思っていた。
だから、呑気に麻雀したり、ラーメン屋を建て直したり、映画撮影したりする彼ら彼女らに対してずっと「あと30日後に世界が終わるのに何をしてるんだコイツらは…」と不快感が蔓延し、キャラクターたちに感情移入できなかった。
そして、麻雀をしたりラーメン屋を建て直したりするという1話独立した展開は果たして必要だったのか…?
もしひなの能力の凄さを見せつけたかっただけなら、麻雀回だけで良かったと思う。1クール尺でギャグに全力で振り切る回は1話か2話で十分である。
『Angel Beats!』や『Charlotte』で散々指摘されていた「構成」の問題だが、逆に今回は「構成」を意識しすぎて脚本を書いているように感じた。
三つ目の理由は、本来感情移入させるべき主人公・陽太の言動が理解に苦しんだから。
序盤は「30日後に世界が終わる」と言うひなを信じずに受験勉強に励んでいた陽太。
かと思えば、違う回ではひなの言うことを聞いてラーメン屋を建て直しちゃったり、世界が終わることを信じてひなの親元を訪れたり。
終始一貫して主人公の行動理念には矛盾がある。ギャグパートは超人高校生かw
くわえて、しつこく自分勝手でガキじみた言動の一つ一つが彼の気持ち悪さを増大させていた。
これ、「主人公が受験生」という設定さえ無ければおおよそ解決したんじゃないか?
普通に高校二年生で、ひなの言動を徐々に信じていくというプロセスならとくに矛盾も生じなかったはず。
受験のくだりは一切必要なかったし、むしろ展開の邪魔をしているようにすら思えた。
詳しくは後述するが、この気持ち悪さは最後まで増大を続けていく。
シリアスパートがとにかくチープだし
『神様になった日』と「週刊ストーリーランド」
お次は、ギャグパートから飛んでシリアスパート。
本作で一番最初のシリアス(真面目な)回は第5話だった。
前回の第4話がギャグに200%振り切ったとんでも回だったため、180度方向転換して伊座並さん一家の感動話を放り込まれたものだから、感情はもうこの時点で置いてかれそうになったけれど、何とか付いて行けたよ。
自分以外の意見を仕入れず、観終わって一番最初に出た感想が「とても良い話だった」であった。
伊座並お母さんのセリフ・シチュエーションを中心に脚本が素晴らしく、4話までに確固たるフリの積み重ねがあったら泣いてたかも…とさえ思った。
だがネットの感想を見てみると...「週刊ストーリーランド[天国からのビデオレター]のパクリ」だという意見が多く目についた。
この回で「週刊ストーリーランド」の存在を知った僕は、どうせ5ch民のしょうもない言いがかりだろ…と疑いにかかりながら、いざ[天国からのラブレター]を観てみたところ...
これはまずいですよ、麻枝さん!
インスパイアされたでは済まされないレベルであり、”パクリ”と呼んでも差し支えないほどに酷似していた...
それに普通に観て泣いちゃったよw
「模造品は本物に勝てない」ってのはどうやら正しいようで、シナリオ・脚本面では[天国からのラブレター]は非常に優秀だった。ちょっと他の「週刊ストーリーランド」も観てくるわ。
『神様になった日』が勝っているのは、お母さんの可愛さと作画とキャスト陣の演技だけである。
バレないと思った犯行ではなく、高度で分かりづらいパロディーネタだと信じたいが、気になる人は自分の目で確かめてほしい。
ツッコミどころ満載の第6話
続けて第6話。 メインキャラ全員集合!の夏祭り回であり、ギャグとシリアスが混合していた回だと思う。
その中でも中盤のこのシーンを見逃すことはできない。
前作『Charlotte』より、高城丈士朗がまさかの友情出演。
今作はCV水島大宙になりそうなメガネ枠が居ないなぁ…と思っていた所での登場。
「引くなっ…!」はこっちの台詞だから!!!
「Charlotteと同じ世界」だという思いもよらない設定が発覚したが、今後の何の展開にも繋がって来ないただのファンサービスであって、無駄に考察班の頭を回転させただけで終わってしまった。
高城は好きなキャラクターだけれど、これは要らないファンサービスである。
そして、祭りに疲れて冷凍車の積荷で休憩していたひなだが、積荷の扉が閉まってしまい遠くに冷凍されながら運ばれてしまう。
それに陽太は全知の神をも凌駕する勢いで気づき、友人・阿修羅のバイクで冷凍車を追いかける。それからおそらく時速80km以上のスピードは出ているであろう高速道路で、前を走る冷凍車に跳び移ってひなを無事救出。
うん、いやどこからツッコんだらいい?(見取り図のツッコミのトーンで)
売れっ子芸能人・天願さんがわざわざ男子高校生に会いに地方の祭りまでやって来たところから??
ひなは間抜けすぎて「全知の神」信用度を失ったし、唐突に明かされる阿修羅が交通事故に会ってバスケの大会に出られなかった過去に困惑。『CLANNAD』の岡崎朋也か∑( ゚Д゚ノ)ノ
で、何よりも高速道路上の陽太の一連の行動が完全に慣性の法則を無視しているwww
普通そこで跳んだら後ろに落下して大怪我しない? というか、その前にバイクがバランスを崩して横転しないか?
この無茶苦茶さはギャグアニメだからだろうと思いたかったが、とてもギャグアニメとは程遠い真面目なシーンだったので、もう「そういう物理法則が働く世界」だと認識した。納得は行ってない。
第8話になってようやく動き出した物語
第8話からは作品全体の雰囲気が急激に重くなり、シリアスなシーンが増えてくる。
第7話が又してもギャグましまし回だったから、ほんとに急激...
第8話は、「もしやひなは他人には見えない存在に…!?」という視聴者の勘繰りを逆手に取ったホラー演出にまんまと引っ掛かり、ようやくひなの過去の謎が少しずつ明らかになって来る。
そこで僕は、ひなの父親と陽太のやり取りに不快感が募って仕方がなかった。
ひなの父親の主張や気持ちも分かるので、敵のボスみたいな感じで描かれてしまってる所に制作陣の意図を感じるが、その意図にまんまと乗せられて嫌いになったのも事実。
夕陽が沈む海辺ではしゃぐひなを眺めながら陽太に向かって「まだ子供なんだよ…」と言いたげに話し、悟ったような口調で「医者」だと名乗るシーンは、何千回とドラマで見たようなシチュエーションだ。新鮮味の欠片もない。
陽太もそんなひなの父親に対して「勝手だ!勝手すぎる!」と怒り散らしていたけれど、自分がひなを救いたいからという理由で、ひなを連れてひなを捨てた父親のもとに泊りがけで突然訪れる陽太こそ「勝手だ!勝手すぎる!」である。
どちらも勝手で気持ち悪さしか呼び覚まさないキャラクター同士の掛け合い。常に「何なんだこの展開…」という思いでモヤモヤした。
この回で評価できるポイントは、謎に凝った「零れたロイヤルミルクティー」作画の1カットだけだ。どこに気合入れてるんだよ!!
鈴木少年パートの薄っぺらさは異常
お次の第9話は、鈴木少年パートから物語が進行し、鈴木少年の過去が明かされる。
しかしながら、鈴木少年の両親は息子に暴力を働いてハッカーの仕事をさせてたという、幾度も見てきたありきたりな不良クソ親設定。
過去回想が終わると、CEOなるキャラクターの指示のもとスーツを着た大人たちに鈴木少年はこっぴどく殴られる。なんで殴るの?
そしてマイスーパーコンピューターを駆使し、情報の海にダイブ。
「情報=海」と表現して比喩映像が展開されるのは非常に古臭く、金魚が登場して鈴木少年が魔法を撃ち出したときにはもう何がなんだかさっぱり...
鈴木少年パートは最初からずっとこの調子だ。
鈴木少年は第3話の終盤に登場し、まずは顔見せと言わんばかりに己の能力を見せつける。
『鋼の錬〇術師』の主人公であるエド〇ード・エル〇ックのように両手を合わせ、ホログラムの映像を映しだして街の防犯カメラをハッキングし、迷子の少女を助けると言った内容。
付き人の黒スーツのおっさんや乗り回すレクサスといい、もうとにかく内容や設定が薄っぺらく、いとも簡単に底が見えてしまう。
黒スーツで威圧感が漂うのは「逃走中」のハンターだけだし。
第10話でも陽太の通う高校に転校して来るため登場するが、陽太の大学入試試験会場に突然現れては急にブチギレ...
と思いきや、ひなが寝ている病院まで送ってくれるという”極度のツンデレ姿”を最後に振る舞ってくれた。精神状態がかなり参っているようだ。
話を第9話に戻して、鈴木少年の頑張りによって「世界の終わり」の真実を知ったひなは、謎の組織の偉いスーツ姿のおっさん達に「判子を押され」て、ひなの脳内からチップが外されることが決定。
何を言ってるのか分からないって? 僕にもよく分からないさ。
けれど陽太は「ひなの事が大好きだから別れるのは嫌だ。一緒に逃げよう!」と愛の告白。
互いが互いを好きになる描写があまり無かったのに、いきなり幼女に告白する高校生とそれにときめく全知の神。しかし陽太の告白は虚しく、ひなは謎の黒づくめ集団に連行。
「泣いて下さい」と言わんばかりの特殊EDが流れたが、もう僕は冷えた気持ちでいっぱいだった。
とにかくチープで薄っぺらいシリアス展開。
主人公・陽太がただただ気持ち悪い終盤の展開
脳のチップが外されて「ロゴス症候群」の症状に再び取り憑かれたひな。
陽太は大学受験をほっぽり出して鈴木少年の力を借り、そんなひなと再び一緒に過ごしたいと救出に向かう。
この第10話~第12話(最終回)で描かれる陽太がひなを介護するシーンに至っては、主人公の行動すべてが理解できなかった。
まず、ひなを好きになる道理やひなが心の底から好きだという深い感情が描写されてないので、大学入試よりもあの夏の日々、大学生になるよりもひなと一緒になると奮起して犯罪にまで手を染める陽太に付いて行けないのだ。
何がお前をそこまで突き動かす!?
それから介護施設でひなに会い、陽太がひなを救うべく取った行動がこちら。
- ”男性恐怖症”という謎の新たな設定が加えられたひなにグイグイ近づき、ひなの発作を引き起こしてしまう。
- ひなの肩をがしっと掴み、無理やり自分の方へ向かせようとする(素人でもダメだと分かるムーブ)。
- あの夏の日々ひなはゲームが好きだったことを思い出してゲームをやらせてあげるが、ゲームに熱中するあまり急に叫んだり、手を全力で突き出して脅かしたり、しつこく指示して自由にやらせてあげなかったりと、ひなの気分を害してしまう。
- 真っ暗な部屋で寝ているひなの横で、徹夜でゲームしてレベル上げの代行。彼曰く「最近のコントローラーはそんなに音が立たない」から要介護者の睡眠の邪魔にならないだそうな。
2週間というタイムリミットに焦っているのは分かるが、不器用かつ先走りすぎであり、学習能力がまるでない。病人や障がい者の方がこれを見たらどう思う?
全ての行動に高校生とは思えないほど常識や配慮に欠けるものが付き纏い、ただただイライラを募らせるばかりだった。
よくひなに付きっ切りの介護士・司波さんも許容するものだ。
ここまでは陽太に対して明らかに突っかかって来るなど、いかにも「陽太=正義、司波さん=悪」であるかのように演出している。
けれど僕には、
「陽太=現実の見えてない自分勝手な子供、司波さん=陽太みたいな子供にもちゃんと接してくれる現実が見えた正論おばさん」
にしか見えず、どうしても司波さんの方が優しくて正しく思えてしまった。きっとつまらない大人思考になった証拠だよね。
そんな司波さんにフォーカスを当てた過去回想が唐突に始まるのだが...サブキャラのバックには必ず拗らせた過去がある恒例のパターンは百歩譲っても良いとして、いつも唐突なの。
合間に取って付けたような過去回想ではキャラクターに深みが増さないし、感情移入など到底不可能だ。阿修羅のバックボーンと言い、過去回想の入りが下手である。
他にも気になった点を挙げると...
- 友人と両親と芸能人が一堂に会する訳分からんLINEグループがある。
- 高い金を出して受けさせた大学受験を投げたことに怒らず、けれど「男だから」とナチュラルにモラハラして来る両親。優しいのか厳しいのかどっち?
- ひなは一人でトイレや入浴もできないほど筋力が弱っているはずなのに、クッションに正座してコントローラーを操作できる。
「ロゴス症候群」は神経が委縮して筋力が低下し、最終的には死に至る病気だと作中では説明されており、僕の認識では「筋ジストロフィー」に近いものだったんだが…?? せめて作中だけでも設定は守り抜いてほしい。
そして最終回、専門知識も持たない不審者が幼女とゲームし、それを警察にも通報しない司波さんの懐の深さを見せられた後、ついに警備員に連れてかれた挙句腹パンを喰らう陽太。
なんでこの世界の大人は昭和みたいにすぐ手が出るの? これは流石に警備員が酷い。
けれども、なぜか見送りに来てくれる司波さんとひな。不審者の認識なはずなのに、最後まで理解不能なほどに優しい司波さん。
そしてひなは、記憶喪失の状態から奇跡的に陽太のことを思い出し、陽太の元へと駆け寄る。おじいちゃんにチップを埋めてもらっていた時点で十分に”奇跡”は起こってるんだけどね。
このシーンはほとんど『AIR』のラストやないかいヾ(゚д゚; ) 強烈なデジャヴ感。
『AIR』のAIR編もだーまえ執筆だったけど、”原点回帰”ってこういう事なの…!?
僕の「海外に移るほど重病の要介護者をどう一般家庭で育てるんだよ?」という疑問も置いてけぼりにされ、その後みるみる回復を遂げていくひな。
陽太は浪人して今から「ロゴス症候群」の研究者を目指すそうな。今から医学の道を志すのは無理難題だし、治療法を解明したところでひなはその頃生きてるのかって話もここに置いておくとしよう。
映画撮影も無事終わって上映会。
いかにも学生映画なクソつまらない内容を見せられるが、カメラアングルとCGだけは一流なところが詰めが甘い。
これではプロのアニメ演出家が手を抜いて作った映画ではないか。
学生映画のクソさとは何たるかを『朝比奈ミクルの冒険 episode00』でも観て勉強してほしい。こういう細かい箇所に京アニとPAの差が出る。
そんな学生映画が現実と繋がっているというメタ構造であり、メイキング映像のひなのセリフが第1話の冒頭とタイトルに繋がるというオチ。
第1話と最終回を繋げるのは名作の常套手段であり鮮度は皆無だが、このオチは悪くないと思った。
エンディングのスタッフロールの映像は、『Kanon』の最終話と『CLANNAD』の智代ルートとほぼ同じやないかいヾ(゚ε゚ )
これまた強烈なデジャヴ。あゆの車椅子を押す祐一、あるいは弟の車椅子を押す智代の姿が見えるぞ...(既視感の正体)
智代ルートのみならず、智代アフターまで書いてしまったほど智代に思い入れのあるだーまえだが、”原点回帰”ってそういう事なの…!?
終盤の展開に至っては正直、佐倉綾音さんによるロゴス症候群にかかったひなの演技くらいしかクローズアップして褒めるべきポイントは無かった...
”原点回帰”とは
作品を総体的に見て、たしかにこれまでの「Key」というブランドや「麻枝准」というクリエイターのテイストは踏襲しており、それを感じることは存分にできる。
だが、その二つが持つ悪い部分が大きく滲み出てしまったのが本作だと思う。
ギャグは古臭いままよりボリューミーになっていたり、そのわりにシリアスがとにかくチープだったり、いつも以上にツッコミどころが満載だったり、不要な要素が多かったり...
終始”24時間テレビを見ているような気持ち悪さ”が増幅していくだけにも等しい12話であった。
また、”Keyのパターン”はもうすでに多くの人に知り尽くされてしまっている。
日常ギャグパートでキャラクターとの交流によりプレイヤーは感情移入して行くが、ヒロインが謎の病気や呪いによって不幸な目に会って感情を引き摺られ、最終的には舞台装置のように殺される、もしくは何かしらの奇跡で一命をとりとめて泣かされる。
今回は後者のパターンだったが、もっと新しいアプローチ(切り口)から洗練されたシナリオで、最終的にはいつものパターンに丸め込まなければ、もうユーザーに泣いてはもらえない。
パターンは否定していない。それが「Key」と「麻枝准」のらしさであり、20年以上に渡って評価されてきた素晴らしい個性だから。
でもアプローチまで同じなので、「ああ、それもう見た事あるから知ってるよ」となってしまったのだ。
- 夏が舞台 ⇒ AIR、サマポケに次いで三度目
- 野球 ⇒ いつもの
- ラーメンセットオオオ!!!⇒ 国崎往人(AIR)
- 主人公がバスケをやってる、バスケで肩が上がらない ⇒ 岡崎朋也(CLANNAD)
- 死にそうに愛する人の元へ駆け寄るヒロイン ⇒ 観鈴ちん(AIR)
- 車椅子 ⇒ あゆ(Kanon)、観鈴ちん(AIR)、坂上智代(CLANNAD)
...すべて麻枝准が手掛けた過去作から”まんま”持ち込んでいる。もはや”マンネリ”どころの騒ぎではないのだ。
キャッチコピーでは「『Angel Beats!』『Charlotte』を経て麻枝准は原点回帰する。」と謳われているが、本作は”原点回帰”を色々と履き違えた脚本を中心に事故ってしまったなと感じる。
本作で泣いたという人は、本作がKeyに触れた初めての作品だったか、あるいは非常に純真な心の持ち主であろう。
面白い面白くないや感動できた感動できないを差し引いても、残念ながら「麻枝准」の”原点”をあまり感じることができなかった。
そもそも”原点とは、”原点回帰”とは何ぞや?…だなんて考え出すと、記事がもう1本書けてしまうほどキリが無いのだが。
僕は”麻雀回”のような、いつものパターンだけれどそれゆえに洗練されていて、尚かつアプローチが新しいものを出し続けてアップデートして行かなければ、「Key」は時代に取り残されて他のギャルゲーブランドと共にあえなく滅びてしまうと思う。
正直ギャルゲーブランドで最も安泰だと思われていた「Key」に対しても危機感を感じてしまった。
だが、ゲームの最新作『Summer Pockets』が売上も評判も良いのと、本作でも「音楽」に関してはまだ良かったのが救いであろう。
Liaさんが歌唱してくれなかったのは個人的に残念だったが、OPとEDは普通に良かった。
まとめ:泣けなかった日
放送前の期待値はわりかし高かった。
本作の放送前ニコ生特番にて、キャスト陣が「面白すぎて8話までもう観ちゃった」と言っていたり、制作陣が「今回はプレスコで制作しているから声優さんの収録は1年前に終わっている」と述べていたり。
また、作品発表時から各所で「麻枝准」「原点回帰」の2ワードを大きく打ちだし、「Key×PA×ア二プレ」最高傑作を匂わせるように煽っていたから...
だが結果は「Key×PA×ア二プレ」タッグの最低作品。『AB!』⇒『Chalotte』と着実に劣化している。
『Kanon』『AIR』『CLANNAD』の「Key」黄金時代はいずこへ。
ゆえに落胆はかなり大きい。おそらく「Key」というブランドや「P.A.WORKS制作」という肩書きがなければ、とうに視聴を切り落としていたに違いない。
僕はどんなに好きなクリエイターの作品であろうと「面白いものは面白い、面白くないものは面白くない」と正直に言わなければ気が済まない。
だから僕はKeyのファンとして、『神様になった日』は面白くなかったし泣けなかったと断言する。
酷評レビュー? ああそうだとも。そうなってしまったさ。
けれど「Key」にも「麻枝准」にもここで終わってほしくない。
麻枝准氏が原作・音楽を務める『Summer Pockets』のアニメ化や、氏が脚本・音楽を手掛ける『Heaven Burns Red』だって期待してるし、今後まだまだ作品を作り続けてほしい。
よって僕は最後にこう書く。
「Key」や「麻枝准」の次回作に期待しています。