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最高の原作を最高のアニメ化 アニメ『進撃の巨人』1期~3期(WIT STUDIO版)感想・評価・レビュー【アニメレビュアーズ#20】

 

異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想や評価を書いていく「アニメレビュアーズ」

 

今回は、WIT STUDIOが制作を手掛けたTVシリーズ『進撃の巨人』第1期~第3期(第1話~第59話)までの感想・評価・レビューだ。

MAPPAが制作するTVシリーズ第4期『進撃の巨人 The FInal Season』のレビューは、また別記事で行うことにする。

 

アニメレビュアーズとは?

 

『進撃の巨人』作品情報

アニメ『進撃の巨人』キービジュアル

©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
放送時期

第1期:2013年4月-9月

第2期:2017年4月-9月

第3期:2018年7月-10月、2019年4月-6月

話数

第1期:全25話+OVA5話

第2期:全12話

第3期:全22話

ジャンル ダークファンタジー/アクション
アニメーション制作 WIT STUDIO

 

『進撃の巨人』あらすじ・PV

人類が永きに亘って壁の中に隠してきた、大いなる秘密――。
その真実に一歩近づいた調査兵団だったが、
時の王政により反逆者の汚名を着せられてしまう。

しかし、人類はただ飼われるだけの家畜ではなかった。

真実を追い求めるエルヴィン・スミスの執念は兵団のトップを動かし、
遂に現体制に対するクーデターが勃発する。

民衆を欺き続けた偽りの王は退き、真の王家の血を引くヒストリア・レイスが即位。
自ら巨人を討ち果たした勇敢な女王のもと、人類は新たな時代を迎えようとしていた。

エレン・イェーガーが得た硬質化の能力と、そこから誕生した対巨人兵器。

着々と反抗の準備を進める人類は、悲願のウォール・マリア奪還作戦を決行する。

人類と巨人、互いの生き残りを賭けた究極の戦い。
その先にエレンは、人類は、はたして何を手にするのだろうか?

引用:TVアニメ「進撃の巨人」Season 3

 

 

 

『進撃の巨人』スタッフ

原作:諫山 創(別冊少年マガジン連載/講談社)

総監督:荒木哲郎

監督:肥塚正史

助監督:若野哲也

シリーズ構成:小林靖子

キャラクターデザイン:浅野恭司

総作画監督:浅野恭司、門脇 聡

アクション作画監督:今井有文、胡拓磨、三木達也、橋本尚典

美術設定:谷内優穂、藤井一志

巨人設定:千葉崇明

プロップデザイン:胡拓磨、手島舞

色彩設計:橋本 賢

美術監督:吉原俊一郎

3DCG監督:廣住茂徳

撮影監督:山田和弘

編集:肥田 文

音響監督:三間雅文

音楽:澤野弘之

制作協力:Production I.G

 

『進撃の巨人』キャスト(声優)

エレン・イェーガー:梶 裕貴

ミカサ・アッカーマン:石川由依

アルミン・アルレルト:井上麻里奈

コニー・スプリンガー:下野 紘

マルコ:逢坂良太

サシャ・ブラウス:小林ゆう

ヒストリア・レイス:三上枝織

ジャン・キルシュタイン:谷山紀章

ライナー・ブラウン:細谷佳正

ベルトルト・フーバー:橋詰知久

アニ・レオンハート:嶋村 侑

ユミル:藤田 咲

ハンジ・ゾエ:朴 璐美

エルヴィン・スミス:小野大輔

リヴァイ:神谷浩史

ジーク:子安武人

ケニー・アッカーマン:山路和弘

ロッド・レイス:屋良有作

 

『進撃の巨人』評価

評価項目 作画 演出 音楽 声優 ストーリー キャラ 設定・世界観 雰囲気 面白さ
点数 10 10 10 10 10 8 10 7 10

お気に入り度:★★★★★

 オススメ度:★★★★★

 

 

 

少年誌最高峰レベルの圧巻なシナリオ

「進撃の巨人の一番凄いところは?」と聞かれたら、僕は間違いなく「シナリオ」だと答える。

 

まず「人類に巨人が攻め込んで来る」という強烈な掴みで物語は始まり、生死をかけた人間と巨人の戦い(バトル)が描かれる。

そのため、てっきり「巨人に母を殺された主人公・エレン、そして巨人に生活や命を奪われた人類が、この世界から巨人を一匹残らず駆逐する」という”程度”の内容だと思っていた。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

しかし、そんな当初の想像を遥かに超えてくる、深くて重厚なシナリオが待ち受けている。

戦いがあるから誰かの死があり、残酷な人間同士のやり取りがあり、耐えられない悲しみや感動があり、凄絶な裏切る展開があり、けれど常に多くの謎があり、予想もしない壮大な伏線回収がある。

果てには政治や差別や戦争といった、現実世界とリンクする問題までもが社会風刺的に絡んで来る。

その深い人間ドラマや重々しい展開の一つ一つに、僕ら受け手は強い衝撃を覚え、深く考えさせられるのだ。

完全に原作者・諫山創先生の世界に惹き込まれる。

 

なかでも、政治の話を中心に怒涛の勢いで物語の核心、世界の真理へと進撃する第3期Part2は目が離せなかった。

普通漫画やアニメは尻すぼみ的につまらなくなって行くのに、本作は展開が進めば進むほど面白いし、言うなれば第3期Part2が最も面白い

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

とくに第3期22話(第58話)のエレン父の過去回想、壮大なるタイトル回収には鳥肌が立った。

 

シナリオは間違いなく少年誌最高峰であり、少年誌の枠組みで留まってはいけないレベルであろう。

 

作画兵団による凄まじい立体起動装置アクション

ここまではアニメでなくとも、漫画のレビューでも書けてしまうことである。

ここからは本格的に、アニメになったことによって生まれた要素を語って行きたい。

 

 

アニメになった事による最大の武器は、言わずもがな「映像」である。

とりわけ「立体起動装置」という対巨人用兵装の描写が非常に細かい。

空中のワイヤーと空気の動き、それを制御しながら重力に操られる人体の動き、その人が持った剣の捌き...

諸々含めて、立体起動装置を使ったアクションシーンが唖然としてしまうほどに凄まじい。設定・デザインの段階から緻密に作られてなければ、こんな事はできないであろう。

それはPVやOPを見てもらうだけでも十分に伝わるのだが、中でも立体起動アクションが飛び抜けていたシーンを二つ紹介したい。

 

一つ目は、第1期11話にて、調査兵団の作戦でエレンが巨人化するこのシーン。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

キャラやワイヤーの動きが滑らかすぎる。

そしてカメラワークの拘りが尋常ではなく、見せ方もすごく上手い

そのおかげで背景動画の労力がえらい高そうだが...(CGだとは思うけどそれにしても動かしすぎ)

放送当時この回で力尽き、放送中にも関わらずスタッフを急遽募集していた所からも、明らかなオーバーコストであることは理解できる。だがそれが良い。

 

二つ目は、第3期1話(第38話)にて リヴァイ VS ケニー(中央憲兵)の戦いが繰り広げられるアクションシーン。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

第3期が始まって初っ端のシーンがこれだったものだから度肝を抜かれた。

絵コンテ切った人も、このシーンを手描きしたスタッフも本当にどうかしている。

もはや人業ではない。リヴァイとケニーも。

『マクロスプラス』”伝説の5秒”以来の忘れられない伝説だ。このシーンについて聞かれた荒木監督が「描ける人が居るんですよ~」と当然のように仰っていたのもセットで。

 

 

また、立体起動装置によるアクションシーン以外の、巨人がぶっきらぼうに動くシーンや作画コストの低い静止シーンにも無論抜かりはなかった。

アクションや残虐な描写に全振りかと思いきや、ヒロインだって可愛く描いて魅せ場を作ってくる。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

ミカサかわわ。余談だけど、第2期をこのシーンで終わらせて来るのも構成が上手いよなぁ...

下手だと揶揄されていた原作絵を忠実に再現しながらも、何段階も磨き上げられたキャラデザは称賛モノ。僕の推しであるところのクリスタもめちゃくちゃ可愛くなっている。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

 

作画チームにはどうやら「動かす」という選択しか無いらしく、その頑張りようにファンからは”作画兵団”とまで称えられる始末だ。

もう流石「Production IG」の血を引き、アクションには定評のある「WIT STUDIO」としか言いようがない。「WIT STUDIO」だから、できたこと。

 

作品に緊張感を走らせる声優陣の演技

本作には「緊張感、緊迫感、臨場感、悲壮感、絶望感」と言った、あらゆる張り詰めた空気が流れており、それらが否が応でもひしひしと存分に伝わってくる。

 

それらを作り上げているのは、紛うことなく声優さんだと思う。

キャラクターに声質が合っている、演技が上手いのは大前提として、

まるで本当にこの『進撃の巨人』の世界という”戦場”で生きているかのように、喜び・怒り・哀しみ・緊張・絶望などの感情を表現し、演技している。

 

まさに心臓を捧げており、”キャラクターに命を吹き込んでいる”とは、この作品のことであろう。

正直、アフレコのクオリティが近年のアニメの中では頭一つ抜けている。

実際出演されている声優さんによると、アフレコ現場はピンと糸を張ったような物凄い緊張感に満ちていて気が緩まないようだ。そういう現場の空気づくりも作品の完成度に影響するのだなと思った。

 

 

非の打ち所がないOP・ED

OP・EDの破壊力と、作品を表現した度合いも抜群である。

 

社会現象をも巻き起こした第1期前半クールのOP「紅蓮の弓矢」は、『進撃の巨人』の顔とも言える。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

作詞・作曲・歌唱を手掛ける「Linked Horaizon(以下、リンホラ)」は、本作の主題歌を作るために生まれて来たのかと錯覚するくらい作品にマッチしている。

くわえて、音にハマってカットが切り替わり、サビ前はMAD調に展開していき、サビで全力剛速球のアクション作画を見せびらかす、終始動きまくりな唯一無二の映像。

第1期の内容も孕んでおり、完璧なOPだと思っている。

個人的には、こういうカット数が多くて作画ぶりぶりざえもんなOPが非常に好み。

 

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

そのED「この美しき残酷な世界」は、本作にはちょっとだけ出演している声優・日笠陽子の歌手デビュー曲であるが、僕は”ミカサの歌”だと思っている。

映像を見ればその認識で当たっているだろう。これは”ミカサによるミカサのためのED”

繊細で脆い曲調と意味深な歌詞が、本編を観終わった後の余韻を引き立ててくれる。

 

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

第1期後半クールのOP「自由の翼」は又してもリンホラだが、「紅蓮の弓矢」とはまた違うアプローチだから飽きさせることがない。語るまでもなく作品にマッチした良い曲。

そしてこのOPの絵コンテを務めるのが、アニメOP界の天才・石浜真史氏という事で、オシャレでセンス抜群な情報量の多い映像にただただ魅せられる。

スタッフロールの見せ方、アルミンが血を浴びる周辺のシーン、サビのミクロで立体起動装置にフィーチャーする所は天才の所業。

 

第1期後半クールのED「great escape」は、本作で一番好きなEDだ。

転がっていくクルミにフォーカスを当てたカメラに、メインキャラがオール登場。

そしてサビでは、EDなのに作画コストの高い 巨人 VS 立体起動装置の映像を入れてくる。

楽曲もカッコイイし、映像もカッコイイ。歌詞一つ一つにまで意味があったりと隙が無いのよ。

 

2期OP「心臓を捧げよ」は「進撃の巨人=リンホラ」の等式を揺るがないものにした感が強い。

終盤の畳みかけるようなエレンとミカサのコンビプレイは胸熱。

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©諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会

EDの「夕暮れの鳥」は、諫山先生が大ファンだという「神聖かまってちゃん」の音楽に乗せて、考察が捗りそうな壁画調の怖い映像が流れる。

本作と「神聖かまってちゃん」の相性も最高だ。

 

第3期前半クールのOP「Red Swan」は、XJAPANのYOSHIKIが作詞・作曲をし、L'Arc〜en〜CielのHydeが歌うという、豪華な布陣による美しいOP。一瞬だけ儚い夢を見せてくれた気がした。

ED「暁の鎮魂歌」は安心安定のリンホラ。第2期EDに引き続き怖い印象が強く、第3期Part1最終回の衝撃ったらない。

 

第3期後半クールOP「憧憬と屍の道」とED「Name of Love」は、これまでのOP・EDを踏襲したような映像と音楽で、「WIT STUDIO」が手掛けてきた『進撃の巨人』を総復習するようなものであった。

 

どのOP・EDも好きだし、語りたいことが尽きない。お手本のように非の打ち所がない。

 

まとめ:心臓を捧げよ

『進撃の巨人』は「怖い」だとか「グロい」だとか、一緒くたに一言では言い表せない。

緻密に考え込まれたシナリオと惹き寄せられる独特なセリフ回しを持つ原作漫画を、作画兵団が見事に映像化し、声優さんが命を吹き込み、音楽が雰囲気を作り上げ、アニメになった事によって”完成”された作品である。

ここまで無駄がなく、文句の付けようがない上質な作品を見たことがない。 

ジャパンアニメーションの最高峰だと思う。 

 

 

『進撃の巨人』を配信で観る

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