異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想や評価を書いていく「アニメレビュアーズ」。
今回は、僕が至高のヒーリングアニメだと愛して止まない『ARIA』シリーズの完結編。『ARIA The ORIGINATION』の感想・評価・レビューだ。
ネット上ではシリーズで最も評価が高いが、僕の感想はちょっとだけ違う。
変わらない雰囲気と空気感の日々のなかで、人々は変わっていく。
出逢いがあれば別れがあるように、どんなに終わりたくないと感じる日常でさえいつしか終わっていく。
愛するからこそ、嘘偽りなく本音のレビューを。
- 『ARIA The ORIGINATION』作品情報
- 第1話で感じ取れる、映像への気合の入りよう
- 最後まで大切なことを教えてくれた素敵なエピソードたち
- アリシアさんの結婚にかなりショックを受けた、物語の終幕
- まとめ:変わっていく癒しと日常の形
『ARIA The ORIGINATION』作品情報
放送時期 | 2008年1月-3月 |
話数 | 全13話+OVA1話 |
ジャンル | ファンタジー/日常 |
アニメーション制作 | ハルフィルムメーカー |
『ARIA The ORIGINATION』あらすじ・PV
プリマ・ウンディーネを夢見る少女、水無灯里。
「ARIA」シリーズは、灯里をはじめウンディーネたちの日常を情感豊かに描いた、
未来形ヒーリングアニメーション。
待望のサードシーズン「ORIGINATION」のテーマは『始まり』。
これまで修業に励んできた灯里たちにも、新しい変化が訪れようとしています。
ARIA の物語を紡いできた佐藤順一監督を始めとするスタッフとキャストはそのままに、ARIAを愛する皆さんに未来へ繋がる新しい素敵をお届けします。
『ARIA The ORIGINATION』スタッフ
原作:天野こずえ「ARIA」(月刊コミックブレイド連載/マッグガーデン刊)
監督・シリーズ構成:佐藤順一
助監督:竹下健一
総作画監督:音地正行
キャラクターデザイン:古賀誠
脚本:吉田玲子、藤咲あゆな、浦畑達彦
美術監督:田尻健一
音楽:Choro Club feat. Senoo
プロデューサー:内田哲夫
『ARIA The ORIGINATION』キャスト(声優)
水無灯里:葉月絵理乃
藍華:斎藤千和
アリス:広橋涼
アリシア:大原さやか
アリア社長:西村ちなみ
晃:皆川純子
アテナ:川上とも子
アイ:水橋かおり
『ARIA The ORIGINATION』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 8 | 9 | 10 | 9 | 9 | 9 | 9 | 10 | 8 |
お気に入り度:★★★★☆
オススメ度:★★★★☆
第1話で感じ取れる、映像への気合の入りよう
2005年の10月~12月にかけて放送された、TVシリーズ第1期『ANIMATION』。
その放送終了からわずか3ヶ月後に、2クールにかけてTVシリーズ第2期『NATURAL』が放送。
そしてTVシリーズ第3期に当たる本作『ORIGINATION』は、少し期間を開けて2008年の1月~3月に放送された。
よって、制作スケジュールに余裕があったのだろうか。
これまでの『ARIA』シリーズで最も映像レベルが高かった。
1期・2期は、たしかに、背景美術はまるで「ネオ・ヴェネツィア」が実在するように感じられたし、線の少ないアリア社長の作画だけはやたらと安定していた。
けれども、全体的に見て映像レベルは決して高いとは言えず、とりわけ人物の静止画と動きには雰囲気と音楽に負けて目を瞑るしかなかった。
そんな3クール40話を観た後だから、制作陣の「この完結編で手を抜いたらダメだ」という熱意を感じられた。
その熱意は、第1話から早速感じ取ることができた。
アキラさんが”プリマ”としての仕事を見せつけたこのシーン。
プロフェッショナル 仕事の流儀
やはりプロだなと、三大妖精の偉大さを改めて思い知った第1話であったが、特にアキラさんが輝いていたね。一気にアキラさんというキャラクターを好きになった。
こんな気持ちにさせてくれたのも、素晴らしい映像で魅せてくれたからだ。
映像の気合の入りようと言えば、第6話のこのカットも謎だったw
金のアリシア像をわざわざ3DCGで作ったのか…? 今までにないアプローチ。
最後まで大切なことを教えてくれた素敵なエピソードたち
『ORIGINATION』はどれも素敵なエピソードばかりだ。
だが、全話に対してて長々と感想を書き連ねていると記事が冗長になる。
よってここからは、1話と最終話を除く気になった回について簡単に感想を書いていく。
第3話感想 いつも以上に素敵な恥ずかしいセリフを発見
「人が作ったモノには、それぞれ作った人の思いが込められているから、だから受け継がれてるんですよね。大切に、でも当たり前のように」
素敵発見の達人である灯里ちゃんは、毎話必ず1ワードは素敵な恥ずかしいセリフを言ってくれる。
その中でもこのセリフは、ものすごく印象に残った。
”アニメ”も同じだよね。勿論このアニメだってそう。これだから人が作ったアニメ・漫画・ゲームが大好きで辞められない。
本来チョコレート屋のパティシエに投げかけたセリフだが、オタクとして生きる僕にも大切な何かを気付かせてくれた気がする。
第4話感想 ちゃんと”現実”を見せてくれた
戦争において英雄はその名を歴史に刻まれるが、その下には何百万もの名も知れず朽ちて行った死体が転がっている。
それは『ARIA』の世界だって同じ。そんな悲嘆な”現実”を見せてくれたのがこの回だったと思う。
プリマ昇格試験に何度も落ちている子、プリマの道を諦めてシングルとしてトラゲッタに生きると決意した子、同じ壁に自分よりもっと悩んで踏み出せないでいる子...
やはりこの世界にも、夢を叶える者とそうじゃない者、同じ”水先案内人”という括りでも、色んな人がいるのだなと。
急に立ちはだかる現実を描いたことで、よりこの「ネオ・ヴェネツィア」の世界にリアリティが増した。なくてはならない回だった。
キャラクターの顔周りの作画も圧巻。
第5話感想 疑問は残るが、それでも良い話に収まるARIAのズルさ
アイカが、アリシア⇒灯里 アキラ⇒アイカ アテナ⇒アリス に当てはめて、周り2人に劣等感を抱く。
灯里にはコミュ力、アリスには技術という才能がある。だが自分には天から授かった、いわゆる”才能”という奴は無いと悩む。
そしてアイカは、3大ウンディーネの中で一番プリマになるのが遅かったというアキラさんの過去を知り、アキラさんを想う。
一方のアキラも実はアイカに助けられていた。そんなエピソードであった。
だがここで、重大なツッコミポイントが一つ。
アイカには「姫屋のオーナーの娘」という最大の天からの授かり物があるじゃないか?
コミュ力や技術は努力でどうにか打ち勝てる。だが「姫屋のオーナーの娘」という地位は、どう努力したって奪うことはできない。
そして「姫屋のオーナーの娘」という地位さえあれば、コミュ力や技術はどうであれ、コネだけで入社から一人前まで行けてしまいそうだ。
それって明らかな”才能”ではないのか?
その設定に気が付いてない、もしくは忘れているアイカと制作陣には疑問が残る。
しかし、3大ウンディーネとメインキャラ3人を重ねて、その中で対比を作り出すのは、もはや『ARIA』の伝統芸能だ。
何だかんだで最終的には、雰囲気と音楽に押されて”良い話”風に収まっちゃう。このアニメは本当にズルい。
第7話感想 あるかもしれない未来と、あったはずの過去を知る回
寿退社したARIAカンパニーの先輩・アンナさんを訪れて、そこでグランマからARIAカンパニーの成り立ちを聞くというお話。
アンナさんみたいに、いつかアリシアさんも誰かいい男を見つけてARIAカンパニーを去って行くのかな...と思うと悲しくなった(まあ実際にそうなるんだけど)。
全てが終わって思い返せば、最終回のための心準備をしておけよ!…というフリの回だったのかもしれない。
今まで謎めいていた、ARIAカンパニーの生い立ちを知れたのは良かった。
だが、やはり詳細には描いてくれない。
グランマが雨に打たれる野良猫に感化されて、その猫が居た場所に独立の本拠地を建てて、その猫を勝手に社長に据えて・・・そして今。
...というように、ざっくりと、途中経過をかっ飛ばして描かれた。
設立から今日まで、ARIAカンパニーの歴史をもっと知りたかったな。残念ながら、僕が求めていたエピソードの理想が高すぎだようだ。
第9話感想 アリスちゃんの想像を超える裏切り
『AIR』のシナリオ並みにぶっ飛んだアテナさんが記憶喪失になる展開が、実は嘘でした!…という壮大なる茶番だった第8話。第9話は、そんな前回とセットに感じた。
アリスちゃんがミドルスクールを卒業、からの前回果たせなかったアテナさんとのピクニックへ。
それが実はアリスちゃんのシングル昇格試験であることを、モブの「頑張れ」のセリフと背景で気付かされる。ここ、灯里がシングル昇格試験で通った水路だ!…と。
水路を上がった先の風車地帯には灯里とアイカが待ち受けており、そこでなんと、アリスちゃんは飛び級でいきなりプリマに合格!(史上初)
良い二段オチだった。まさかとは思ったけど、そのまさか。人を不快にさせない裏切り展開。
第11話感想 変わり始めた日常が描かれた1話
かつて自分が友達に対して劣等感を抱いて悩んでいた時のように、アイカも空元気で本当は悩んでるのでは?…と心配するアキラさん。しかし当の本人・アイカはあまり気にしてないご様子。
第5話と真逆の構図である。心配性の母親のように、アイカのことを必死に考えて悩むアキラさんを見て、またしてもアキラさんの好感度が上がった。
なんだよ、相思相愛なのかよ。
後半からは、まだシングルとして日々練習する灯里&アイカと対比して、プリマとして働き始めているアリスちゃんを描写。
それぞれが自分の道を拓くときが訪れたので、変わり始めた日常が描かれた。
あの穏やかな日々はもう帰って来ないか…と悲しく思いながら、けれどいつか3大ウンディーネの3人みたく、会う頻度は少なくなってもずっと友達の関係であり続けるのだろう…と勝手に想像をめぐらす。
会う理由なんて「会いたい」という気持ちだけで十分だと思った。
第12話感想 遂にプリマになった灯里ちゃん...
アイカがプリマになり、灯里も無事プリマに。
難なくストレートに合格できたのと、先輩と仲良くなれば人徳で合格できてしまう昇格試験の穴は気になるが、これで良かったのだろう。
手のアップの演出が映える映える。あの灯里ちゃんが遂にプリマに...長かったなぁ~
予想通りに、感動が呼び覚まされた美しい回だった。
アリシアさんの結婚にかなりショックを受けた、物語の終幕
これまで『ARIA』が見せてくれた素敵な体験が全て終わってしまうようで、観たくなかった最終回。ディズニーランドから帰路に就くような思いで視聴した。
なんとなく予感はしてた、というかずっと前から分かっていたんだ。でも書かせてくれ。
アリシアさんを寿退社にする必要はあったの!?!?
男の影など全く無かったし、ラストのラストまで一切触れられなかった。
おい、相手は誰なんだよアリシアさん! 暁なら百歩譲って許せたがそうでもないのかよ! 変に哀しみを植え付けないでくれ!!普通に退社で良いだろうよ!!!
...と取り乱して、女性声優さんの結婚報告を聞いたガチ恋勢の反応みたいになってしまったが、
こうもアリシアさんの結婚&引退にショックを受けている自分に驚いたんだよね。
いつの間にか、アリシアさんというキャラクターがこの作品に欠かせないとても重要な存在になっていたことに、最終回でやっと気付かされた。
まだまだ若くて人気だし、アリシアさんには未来永劫現役でプリマを続けてほしい。けれどこれはアリシアさん本人が決めた道だし、おそらく最初から決まっていて分かっていた運命だ。
OVAの時点で灯里にプリマの資格はあったが、まだ灯里と一緒に居たいというワガママでプリマ昇格試験と引退を見送っていた。
つまり、この『ORIGINATION』の日常はアリシアさんのワガママから生まれた1クールだったのだ。それを知ったら、アリシアさんを否定することはできねぇよ...
アリシアさんの引退式も、灯里とのお別れとARIAカンパニーの引継ぎも、不意に入れてくる悲しい演出も、どれも素晴らしかった。
けれど”感動”というより、アリシアさんが遠くに行くことと、物語が終幕することに対する”悲しみ”と”ショック”の方が大きかった。
そして新しいはじまり。
オトナになった灯里は、着実にアリシアさんになって行っている...
次にARIAカンパニーの系譜を受け継ぐのは、勿論少し成長したアイちゃん。
1期『ANIMATION』の第1話から全てが繋がってる。
アイちゃんはアニオリキャラだから、アニメが無かったら有りえなかった結末。驚きはあまり無かったが、この巧みな終わらせ方には、アニメスタッフに是非とも賛美を送りたい。
まとめ:変わっていく癒しと日常の形
本作『The ORIGINATION』では、日々変わっていくウンディーネとしての彼女たちの日常。そしてメイン3人の成長と、物語の終幕が描かれた。
ネットの評価は本作が最も高いが、僕のなかでは「ANIMATION > ORIGINATION > NATURAL > OVA」という順位だ。やはり『 ANIMATION』こそが至高。
『ORIGINATION』はこれまでの積み重ねがあっての感動かな。
『ARIA』のアニメシリーズを総括すると、第13話の冒頭のアリシアさんのセリフが全てに近い。
「まだまだ遠くに見えていた未来はいつの間にかすぐ目の前に来て、そしてやがては思い出に変わっていく...」
僕にとって『ARIA』という作品は、まさしくそういうアニメだった。
OVAを含めれば53話(4クール分)もあったのに、終わってみれば意外なほどにあっという間だった。
観ているうちは案外そうでもないが、観終わったあとにじっくり染みてくる素敵なアニメ。
間違いなく、人生のなかで何度も観返すことだろう。
『ARIA』の世界に生まれたかった。いや、『ARIA』の世界に転生して『ARIA』の世界に墓を建てる、で譲歩しておこう。
その時には灯里ちゃんは僕が貰う。ごめんな、アカツキン!!
それでは、最後に僕からこの言葉を。
ARIAを通して皆さんと出会うことができたんです。この果てしなく広いネットの海の中で。
それってとっても素敵な奇跡だと思いません?
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