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何百年も色褪せない傑作の復讐オペラ! アニメ『巌窟王』感想・評価・レビュー【アニメレビュアーズ#34】

 

異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメのレビューをネタバレ有りで書いていく「アニメレビュアーズ」

 

今回は、2004年にGONZOが制作したTVアニメ『巌窟王』の感想と評価だ。

 

原作は、1844年~1846年に刊行された、アレクサンドル・デュマ・ペールの小説『モンテ・クリスト伯』。フランス文学の頂点に君臨する名著である。

日本では『巌窟王』というタイトルで翻訳されているほか、映画化や舞台化など様々な派生作品が存在する。

その派生の1つが、今回レビューするアニメだ。

 

【アニメレビュアーズとは?】

 

『巌窟王』作品情報

アニメ『巌窟王』キービジュアル

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA
放送時期

2004年10月-2005年3月

話数

全24話

ジャンル

ファンタジー/SF

アニメーション制作

GONZO

 

『巌窟王』アニメ あらすじ・PV

15歳の春。僕がはじめて憧れた人は、復讐鬼だった。

パリの貴族の家に生まれたアルベールは、退屈な日常を脱するために、親友のフランツと旅に出た。

月面都市ルナで、出会ったのは、モンテ・クリスト伯爵という大富豪。傍らには絶世の美女、後ろには屈強な部下を従え、ルナ一番の高級ホテルで優雅に暮らすその姿。伯爵のミステリアスな魅力にすっかり心酔したアルベールは、伯爵をパリの社交界へ迎え入れる。

しかし、アルベールはまだ知らない。伯爵の真の目的は、その昔、自分に無実の罪を着せ、フィアンセを奪ったアルベールの父と、フィアンセであった母への復讐であることを。そして、その間に生まれた自分自身も、復讐の標的であるということを―――。

【引用:公式サイト】

www.gonzo.co.jp

 

 

『巌窟王』アニメ スタッフ

原作:アレクサンドル・デュマ著「モンテ・クリスト伯」

企画原案・キャラクター原案・監督:前田真宏

シリーズ構成・脚本:神山修一

脚本:高橋ナツコ、山下友弘

キャラクターデザイン:松原秀典

友情デザイン:小林誠

美術監督:佐々木洋、竹田悠介

色彩設計:村田恵里子

ディジタルディレクター:ソエジマヤスフミ

スペシャル3DCGIアニメーター:鈴木朗

撮影監督:荻原猛

編集:重村建吾

音響監督:鶴岡陽太

音楽:ジャン・ジャック・バーネル(The Stranglers)

 

『巌窟王』アニメ キャスト(声優)

モンテ・クリスト伯爵:中田譲治

アルベール:福山潤

フランツ:平川大輔

ユージェニー:中村千絵

フェルナン:小杉十郎太

メルセデス:井上喜久子

ペッポ:中原麻衣

ヴァランティーヌ:三浦純子

G侯爵夫人:夏樹リオ

エデ:矢島晶子

バティスタン:飛田展男

ベルッチオ:石井康嗣

ドプレー:土門仁

ボーシャン:白鳥哲

マクシミリアン:稲田徹

シャトー・ルノー:MIKI

ダングラール:辻親八

ビクトリア:松井菜桜子

ヴィルフォール:秋元羊介

エロイーズ:渡辺久美子

エドワール:鬼頭典子

 

『巌窟王』アニメ 評価

評価項目 作画 演出 音楽 声優 ストーリー キャラ 設定・世界観 雰囲気 面白さ
点数 8 10 8 9 10 10 10 9 9

お気に入り度:★★★★

 オススメ度:★★★★★

 

 

偉大な原作を大胆に改変したストーリー

本作は、原作である『モンテ・クリスト伯』に独自の解釈で大胆な改変を施し、2クール24話のアニメに見事収めた作品である。

 

1つ目の改変:主人公の切り替え、若者たちの人間ドラマへ

1つ目の大胆な改変は、原作では脇役の一人にすぎなかった「アルベール」を主人公とし、アルベールの視点から「巌窟王」、もとい「モンテ・クリスト伯爵」が復讐を行うさまを描いている点だ。

ゆえにモンテ・クリスト伯爵が原作ほど深く描かれない代わりに、アニメオリジナルでアルベールの成長物語や、アルベールの友人らの人間ドラマが色濃く描かれるのだが、これが本当に素晴らしい出来

 

アニメ『巌窟王』1話のスクリーンショット

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

主人公・アルベールは、15歳という若さもあるだろうが、純真無垢で思慮が浅く、視野も狭くて己が恵まれている自覚すらない。明らかに不吉なオーラが漂うモンテ・クリスト伯爵に、異常な敬愛の念を示して傾倒していく。

そんなヘタレ馬鹿主人公に、イラっとする事もかなりあった。

だが、残酷なる真実を知り、友人の死などの経験を通して、最後には立派な大人へと成長する。その成長した姿にはカタルシスすら感じた。

 

アルベールの幼馴染・フランツは、まさに”親友”と呼ぶにふさわしい、良き友人ポジションのキャラクターだった。

最後まで友を想い、友のために死んで行ったただの良い奴。彼の生と死は、アルベールの成長物語に欠かせない要素だ。

アニメ『巌窟王』のユージェニー

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

アルベールの幼馴染にして婚約者・ユージェニーは、ちゃんとメインヒロインだった。

最初は印象が薄く、アルベールとは冷たい関係に終わるのかと思ったら、アルベールの事が好きだと気付いてどんどん好きになっていく辺りから、可愛げが増してヒロイン然として来る。

いつも一緒だから分からなかったけど、離れて閉ざされて初めて分かった…的な。

大人たちに翻弄されるアルベールとユージェニーの恋愛模様は、本作でもっとも魅力的なドラマの1つであろう。

アニメ『巌窟王』のヴァランティーヌとマクシミリアン

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

ヴァランティーヌとマクシミリアンのドラマも忘れてはいけない。

フランツの婚約者だったヴァランティーヌに一目惚れし、無我夢中で我武者羅にアタックしたマクシミリアン。

アルベールとフランツの応援のもとにその想いは届き、遠くの地で晴れて結ばれた二人。

この二人が魔の手から離れ幸せになれて良かった…と心の底から思えた。ただの脇役にすぎないのに、だ。

名作は裏ドラマも魅力的なのである。

 

アルベールを始めとする若い世代の人間ドラマは、親たちのいざこざに巻き込まれた子供たちの物語、では終わってない。

主題であるモンテ・クリスト伯爵による復讐ストーリーの素晴らしいアクセントになっており、この大胆な改変は成功している。

 

2つ目の改変:近未来に舞台を移し、SFアニメ調にアレンジ

アニメ『巌窟王』のSF的世界観

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

2つ目の大胆な改変は、物語の舞台を幻想世界である未来のパリへと移し、所々をSF・ロボットアニメ調にアレンジしている点だ。

舞台の範囲は地球を超えて宇宙まで広がり、宇宙人や宇宙船などが登場。中世ヨーロッパの貴族制が残ったままだが、デジタル証券が発達しており、クルマや掃除機も存在する。

さらに決闘では、鎧騎士を模したロボットにキャラクターが乗り込み、ロボットアニメの如く死闘を繰り広げる。

1800年代のヨーロッパで生まれた原作では、絶対にありえなかった要素、展開だ。

 

これには、本作を企画した前田真宏監督が、当初は『モンテ・クリスト伯』をモチーフにしたSF小説『虎よ、虎よ!』をアニメ化しようとしていた事が関係しているという。

が、これも見事な改変だったと思う。あまり矛盾や違和感を感じることはなかった。

むしろ、壮大な世界観やド派手な迫力をより感じることができた。

 

モンテ・クリスト伯爵(CV:中田譲治)の圧倒的存在感

アニメ『巌窟王』のモンテ・クリスト伯爵

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

ここまでは原作からアレンジされた、いわばアニメオリジナルの要素について書いてきた。

だが、あくまでも本作の本題は、モンテ・クリスト伯爵ことエドモン・ダンテスの復讐劇である。

色んなドラマや感情が錯綜する中で、魅力に満ち満ちて魅惑的で一番面白かったのは、間違いなくこの復讐物語だ。

 

モンテ・クリスト伯爵はかつてエドモン・ダンテスという名の一等航海士で、同僚だった最愛の人・メルセデスと結婚式を挙げるが、その最中に無実の罪で逮捕&投獄される。

生き地獄の果てに、かつて無実の罪で己を葬り勝ち組となったヤツら(主人公世代の親世代)を、絶望に落とすべく「巌窟王」と契約。

そして、モンテ・クリスト伯爵という復讐鬼と化した彼に、メルセデスの子であるアルベールが出会う所から1話が始まる。

このバックボーンと、何もかもがモンテ・クリスト伯爵に仕組まれた”必然”の物語が、圧巻の完成度なのだ。

壮絶な復讐の動機がしっかり存在し、復讐の過程はさながら舞台芸術で、復讐の最後は美しい。完成されている。

 

巌窟王に変異するモンテクリスト伯爵

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

また、モンテ・クリスト伯爵は作中で圧倒的なる存在感を放っていた。

その根源は、中田譲治さんの低音の効いた声質と、満面の悪に堕ちた演技にあると思う。ハマり役だ。

一方、航海士時代の演技は爽やかで、善悪の演じ分けも上手かった。

 

彼の圧倒的存在感は、それ以外のキャラクターが霞んでいるという裏返しではない。

主人公・アルベールを演じる福山潤さんの純真演技を筆頭とし、それ以外のキャラクターを演じる声優さんの演技は”名脇役”と言えるものだ。

あくまでもアルベールの視点から綴られる、モンテ・クリスト伯爵ことエドモン・ダンテスの人生が本物の主役なのである。

 

 

唯一無二の映像世界

素晴らしいストーリーとキャラクターを飾り付けているのが、異彩を放つ独特な映像づくり。

 

アニメ『巌窟王』の衣装

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

衣装デザインは「2Dテクスチャ」を用いているため、キャラクターは動いているのに、衣装のデザインは動かないという不思議が発生する。

(『偽物語』の白金ディスコ〈OP3〉みたいな映像だと書けば分かりやすいか?)

最初は戸惑いを隠しきれなかったが、観ているうちに徐々に慣れて行った。

ちょっと奇抜だったりもするが、衣装デザインはとても高尚で美しい。バリエーションも豊富だ。

 

また、パリの未来都市やクルマや宇宙船などの背景は「3DCGI」で作られており、かなり予算が掛かっているのが伺える。

少々時代を感じるくらいにはCG浮きしているが、全体的に映像のクオリティは高い。

特筆したいのは11話、アルベールの乗っていたバイクが横転し、ヴァランティーヌの追っ手である警察車両をブロックするシーンの映像は、さながら映画で凄まじかった。

アニメ『巌窟王』の3DCG

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

この独創的な映像世界は、美麗壮大な物語にマッチしており、中世ヨーロッパのような雰囲気に浸ることができた。

 

 

OPはアルベール、EDは巌窟王に捧げる歌

アニメのOPはとにかく激しい「動」が、他方EDは余韻に漬け込んだ「静」が多い。

しかし本作は真逆で、OPが「静」、EDが「動」となっていて、いささか新鮮だ。

 

OP曲「We Were Lovers」は、作中ではユージェニーがアルベールを想って書かれた歌という設定だが、

まさに主人公・アルベールというキャラクターを表現した一曲、そして映像だと思う。

 

ED曲「You Won't See Me Coming」は、余韻に一切浸らせてくれたない獰猛な楽曲で、この暑苦しさや激動っぷりはエドモン・ダンテス、というか巌窟王を表していると思う。

ED映像も荒い本編のダイジェストとなっている。

 

特筆したい話数ごとの感想

本作は全部の回が面白く、1~24話通して1話ずつ感想を書きたいくらいなのだが、今更書いたところで誰も読んでくれない。

ので、ここからは特筆したい話数の感想だけを書いていく。

 

第15話(感想):伯爵の真実への皮が剥ける、ターニングポイント

アニメ『巌窟王』第15話

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

主人公・アルベールにモンテ・クリスト伯爵の真実が明かされる、本作のターニングポイントとなる回。

終盤、アルベールに朗らかに別れを告げた伯爵だったが、一人宇宙船で押し黙る。

泣いているのかな?…と思い見守っていたら、笑っていたああああああ!!!!!!

お手本のようにアルベールを激しく嘲笑する伯爵。

この演出には、思わず鳥肌が立ったw

本作で一番見応えのある回だった。

 

第18話(感想):ロボットアニメ風だった決闘

アニメ『巌窟王』第18話

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

モンテ・クリスト伯爵との決闘。

アルベールの指定通り、人が鎧を着て剣を突き合わせて戦うのかと思いきや、まさか鎧型のロボットで戦うとは。たしかに指定通り鎧と剣だけど...

しかし、アルベールが戦っていると思われていた鎧には、実は親友のフランツが入っていて。伯爵に滅多打ちで殺されてしまう。

フランツがアルベールへのバースデーカードをユージェニーに託した時点で、アルベールの代わりに決闘に出て死ぬ展開は悟ってしまっていたが...

ただ決闘を行うだけでなく、いくつもの裏切り展開が用意され、一筋縄で終わらなかったのは良かった。

良い奴だったよ、フランツ...

 

第20話(感想):違う意味でさよならユージェニー

アニメ『巌窟王』第20話

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

20話は「さよならユージェニー」というサブタイトルからして、ユージェニーがアンドレアと結婚して(完璧にNTRされて)、アルベールは孤独という絶望に陥る展開になるのだと思っていた。

がしかし! ペッポの支えやリュシアンとボーシャンの影の功労があって、アルベールはユージェニーを奪取することに成功!!

アルベールがユージェニーをお姫様抱っこし、結婚式場から駆け出していくシーンは嬉々として観ていた。

アニメらしい甘い展開だとは思うが、最愛の人と幸せになれなかったエドモン・ダンテスと、最愛の人と幸せになれたアルベールの対比が非常に効いていた。

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©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

そしてユージェニーは、プロのピアニストになりたいという夢を叶えるべく、アルベールとしばし別れてパリを旅立つ...

そういうポジティブな意味でのサブタイトルだったのかと。

 

第23話(感想):エドモン・ダンテスの最期に自然と涙が

アニメ『巌窟王』第23話

©2004 Mahiro Maeda・GONZO/KADOKAWA

復讐の刃で人を殺してきたモンテ・クリスト伯爵こと、エドモン・ダンテスに待ち受けていたのは”死”。

復讐劇の結末は復讐者の死だと、ピカレスク小説の理で決められているため、予定調和だなと何の衝撃もなかった。

けれど、僕の顔面は自然と”涙”に溢れていた。

それは、ここに至るまでにエドモン・ダンテスの理不尽な人生と、モンテ・クリスト伯爵の活躍がしっかりと描かれていたからだ。

親世代のいざこざに巻き込まれたアルベール達もとんでもないが、一番の不幸者はエドモン・ダンテスである。この最期には、涙を流さずにはいられない。

 

だが欲をいえば、モンテ・クリスト伯爵の手でアルベールの父・フェルナンを殺してほしかった。

絶望の淵へと叩き落されたフェルナンは、反省して自殺するという死に方。ダングラールやノワルティエに比べると虚しすぎる...

 

第24話(感想):後日談としてはちょっと物足りない…

23話が実質的に最終回だったため、24話はエピローグ。

ほとんど物語が動かない、平和で美しい後日談であった。

アルベールの親世代は不幸になったのに対し、アルベールの世代は親に邪魔されず幸せになれた、という”対比”を描いたのは素晴らしい。

これは1つ目の改変、主人公を切り替えて若者たちの人間ドラマも描くアレンジをしたからこそ、描ける結末だ。

 

だがこれまた欲をいえば、アルベールとユージェニーが再開を果たし、マクシミリアンやリュシアンたち友人とパーティーを開くところまで描いてほしかった。

シリーズ構成力は非常に高いのに、この点だけが唯一惜しい。

 

 

まとめ:待て、しかして希望せよ

アニメ『巌窟王』評価

※点数は評価点数+お気に入り度+オススメ度の合計(100点満点)

さすがは原作が何百年も語り継がれる小説なだけある。

いつ観ても普遍的な面白さがある、とんでもない傑作だ。

これが後世のオタクに語り継がれず、隠れた名作となってしまった事が残念でならない。

まあ、美少女アニメ好きにもロボアニメ好きにも掠りもしないジャンルに位置するが、悪逆モノが好きな人にはとことん刺さるはず。

 

この作品を通して分かった事は「持つべきものは友」。

 

それでは、最後にモンテ・クリスト伯爵がアルベールとメルセデスに贈った言葉を、僕からも贈ろうと思う。

待て、しかして希望せよ。

 

 

『巌窟王』を配信で観る

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PCの方は、125%に拡大して閲覧することを推奨します。