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日常系を通り越した教材アニメ 『放課後ていぼう日誌』感想・評価・レビュー【アニメレビュアーズ#12】

 

生粋のオタクでありこれまでに数多のアニメを観てきた僕が、全話視聴した作品の感想や評価を書いていく「アニメレビュアーズ」

今回は、動画工房が2020年に解き放った渾身の日常系ホビー作品『放課後ていぼう日誌』TVアニメの感想・評価・レビューだァ!!

アニメレビュアーズとは?

 

『放課後ていぼう日誌』作品情報

アニメ『放課後ていぼう日誌』キービジュアル

©小坂泰之(秋田書店)/海野高校ていぼう部
放送時期 2020年4月、7月-9月
話数 全12話
ジャンル 日常/部活
アニメーション制作 動画工房

 

『放課後ていぼう日誌』あらすじ・PV

都会から田舎に引っ越してきた鶴木陽渚は、
生き物が苦手なインドア派。
手芸部に入って楽しい高校生活を過ごす予定が、
散歩中に黒岩悠希と出会ったことがきっかけで
謎の「ていぼう部」に入部させられてしまい、
釣りをはじめることに…。
個性的な部員たちに囲まれて、
陽渚の高校生活どうなるの!?

引用:TVアニメ「放課後ていぼう日誌」公式サイト

 

 

 

『放課後ていぼう日誌』スタッフ

原作:小坂泰之『放課後ていぼう日誌』(『ヤングチャンピオン烈』秋田書店 連載)

監督:大隈孝晴

シリーズ構成:志茂文彦

キャラデザ:熊谷勝弘

釣具プロップデザイン:小倉寛之 プロップデザイン:永田杏子

総作画監督:熊谷勝弘、曾我篤史、市原圭子

美術監督:坂下祐太 美術設定:東潤一

美術:スタジオイースター 色彩設計:真壁源太

撮影監督:桒野貴文 編集:小野寺絵美

音響監督:高寺たけし 音楽:櫻井美希

製作:海野高校ていぼう部

 

『放課後ていぼう日誌』キャスト(声優)

鶴⽊陽渚:⾼尾奏⾳

帆⾼夏海:川井⽥夏海

⿊岩悠希:篠原 侑

⼤野 真:明坂聡美

小谷さやか:小清水亜美

 

『放課後ていぼう日誌』評価

評価項目 作画 演出 音楽 声優 ストーリー キャラ 設定・世界観 雰囲気 面白さ
点数 9 8 8 8 7 7 7 9 8

お気に入り度:★★★★☆

 オススメ度: ★★★★☆

 

 

 

ただの日常系に収まらない、それがいつもの動画工房

僕がこの『放課後ていぼう日誌』という作品を知ったのは、今から遡ること丁度一年前の10月。動画工房で制作されることや放送時期、そして初めてのディザービジュアルが公開されたこのツイートである。

この”作品の顔”とも言えるディザービジュアルを見たとき、僕は一目惚れをして、PVやキャスト情報を見る前から視聴を確定していた。それには、動画工房がこれまでに積み上げて来たキャリアという信頼があったからってのも大きい。

そして一年が経過して全話視聴を終えてから振り返ると、某感染症の影響による放送延期や、作品の舞台である熊本県・芦北町が豪雨に見舞われて原作者も被災するなど、あの頃には予想もしなかったハプニングの連続で恵まれない作品だった。

 

それでも逆境に負けなかったこの『放課後ていぼう日誌』。

放送が延期するまでの3話、僕は「釣り」を題材にした萌え寄りの日常系アニメとして楽しんでいた。

とくに第1話で、主人公がタコに絡まれて嘆くシーンなんかは、呑気においそれと茶の間で見れないくらいには濫りがましかった。

画像

このシーンはまさに、アニメが好きなオタクや男性視聴者に向けた、深夜帯萌えアニメ的作りである。僕は触手プr・・・サービスシーンだとしか認識していない。ありがとうオクトパス。

 

第5話にて、ジャージなのにパンチラしちゃうこのカットも非常に素晴らしかった。

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あまりにもパンチラまでの運びと、パンチラ後の二人のリアクションが上手すぎて、深く感動したのを今でも覚えている。

日常系にこういった要素を自然かつ丁寧に埋め込むのは難易度が高い。これまでに数多もの萌えアニメを制作してきた動画工房だからこそ成せる業である。

もう可愛いが過ぎる。世界よ、これがジャパニーズカワイイだ。正直堪らんとです...

 

しかし、体裁を改めて夏から放送が始まった4話以降は、「釣り」や魚を扱った日常系に留まらず、海や自然の何たるかの解を一つ示してくれる教材的アニメ”にギアチェンジしていた。

常に正しい「釣り」と魚の知識を教示してくれて、あるべき海の姿や自然の在り方を見せてくれる。

第9話に至っては、Aパートの「着衣水泳の話」で人命の大切さと救出の方法を教えてくれて、Bパートの「鳥の足に絡まった糸をほどいてあげる話」では動物の命の大切さと救出の方法を教えてくれた。

僕は『放課後ていぼう日誌』で命と自然の大切さを学ぶとは思わなかった。少女たちが着衣水泳をするという水着回にも近しい話なのに、エロの微塵も感じさせなかった。

てっきり『ゆるキャン△』のような日常系萌えアニメだと身構えていたものだから想定外。オーダーとは違う方向に作品が進んでしまったが、これはこれで良いなと思えた。

 

動画工房が作る日常系アニメは、「日常+α」な作品に進化しているように思う。

『NEWGAME』『うまるちゃん』辺りまではただの緩~い日常系アニメだったが、『ダンベル』『恋する小惑星』辺りからは下調べが徹底的に行われており、作中で挟み込んでくる知識量が半端ではない。

ただ観て現実逃避するだけの日常系ではマンネリ気味だった。だからもっと現代社会を辛く生きる人達にとって”ためになる”作品を制作する方向に舵を切り、アニメ業界での存亡を賭けているのではないか。

だが恐ろしいことに、これがもはや動画工房に取っての「いつもの」になってしまっている。

ただの日常系アニメで終わらせないのが動画工房の日常系アニメだった。明らかにあたま一つ抜けている。こういう制作会社が儲からないアニメ業界で生き残るのやもしれない。

 

 

背景の描き込みで納得、そこに芦北町はある

『放課後ていぼう日誌』における動画工房の凄さは、まだ語り尽くせていない。

まず、念入りかつ精密にロケハンが行われているのが伺えるほど、背景美術の描き込みがエグイ!!!

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引用:芦北町観光協会HP

グーグルマップで実際に芦北町の作品舞台になった地を練り歩いたが、まさに”そのまんま”であった。動画工房は下調べの鬼だ。

ネットで検索すれば、作中の映像と比較した聖地巡礼のブログ記事や動画がたくさん転がっているので、是非とも本作を視聴した人は見てほしい。芦北町観光協会もHPで全力で推している。

ここまでされるとね...動画工房の再現度の高さが垣間見えるに違いない。

 

また魚の作画も素晴らしかった

魚をしめたり、ハサミで頭をちぎって内臓をくり抜いたり、包丁で切り身を入れたりする描写も概ねきちんと描いており、調理して出来上がった魚料理は飯テロを体現していた。最終回でキスの天ぷらが食べたくなったのは言うまでもない。

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ただ、残酷な描写はもっと過激でも良かったと思う。ゆるふわ系の釣りシーンとのメリハリや作品雰囲気とのギャップが生まれて、調理シーンがより映えたと思うんだけどなぁ...
 

AパートとBパートが繋がる秀逸な構成と脚本

先述して素晴らしかったシーンとして、第1話のタコの下りと第5話のパンチラの下りを挙げさせてもらったが、丸々1話通してすごく良かった回を評価せねばならない。

 

第4話(感想)

主人公・陽渚が一人だけアウトドア用の服を持っていなかったため、遠くのショップまで電車を乗って買いに行く、というのがAパートの話。

一万円の軍資金を持ってきた陽渚は、ウェアも欲しいし帽子も欲しい。しかし両方どころか片方を買っても予算オーバー。

だが気に入ったウェアがセールにより半額、ギリギリ予算内だったため購入を決意。アウトドア用品って服でも高いのね。可愛ければ可愛いほど高いという資本主義感...

帽子はまた今度…と諦めた陽渚だったが、実はていぼう部の3人がお金を出し合って帽子をこっそり購入しており、帰りの電車内でプレゼントしてくれた。

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「恩を売っといて部活辞めにくくしよう」という魂胆があったという所でオチを付けて、なんてほっこり良い話だ!…と心が和んだ。

 

そしてBパートは、ルアーでイカを釣り上げようというお話。

陽渚が新しく買ったウェアと帽子で釣りをするという点以外、一見Aパートとの繋がりが薄いように思えたが...

釣ったイカが吐いた墨が陽渚に直撃。しかし、ウェアを着てたから汚れずに済んだね!…という展開になった。

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もし陽渚が制服だったらイカ墨の汚れが簡単に落ちてないわけで、主眼が防水にあるウェアを着ていたからいとも簡単に汚れが落ちる。「買ったウェアが早速役に立った!」という事で、見事Aパートの買い物とBパートのイカ釣りが繋がった瞬間だった。

これには脚本が上手いというか、構成が上手いの一言。最もまとまっていた秀逸な回だった。

 

 

第12話(感想)

Aパートは第11話の続きで、キス釣りの話。

最初は魚を怖がり、部長の発案に乗って教わるがままに手を動かすだけの”受け身”だった陽渚が、自ら「これを釣りたい!」と”積極的”になって、完全に「釣り」にハマってしまった姿が描かれた。

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陽渚ちゃんも成長したねぇ(´;ω;`) と思わず親目線の感想が零れる。

主人公の成長を描く、という王道的な内容でとても良かった。

 

Bパートでは陽渚が得意とするお裁縫にも触れて、ていぼう部の4人で魚に関連したフェルト人形を作成。ようやく陽渚がていぼう部で恵まれた気がする...

本来入部するはずだった手芸部が実はむさ苦しい男の巣窟だったことが発覚し、「なぜ陽渚はていぼう部を辞めて手芸部に入るか、手芸部と掛け持ちをしないんだ…」という1話からの疑問が解消された。そういう事だったのね...

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そして中盤で差し込まれた麦茶のくだり。ただ麦茶を作るなか、どれが誰の麦茶か分からなくなる!…という問題が浮上。

その問題は横に置かれてお話は進んで行くわけだが、終盤のこの1カットで、なんと4人で作った魚のフェルト人形が麦茶問題を解決してくれたことを示唆していた。

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何の意味も持たず、ただ休符として入れられたと思っていた麦茶のくだりが実はフェルト人形を作成するという展開の”フリ”で、それがラストで綺麗さっぱり回収されたのだ。

あの麦茶のくだりにも意味があった。合点が行って、僕は思わず感嘆の声を漏らしていたよ。俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

作品世界に惹き込んでくれるオープニング

僕を作品世界にぐっと惹き込んでくれたのは、間違いなくオープニングだろう。ランキングを作ってしまうほどのOP/EDハンターである僕が、語らないという選択肢はない。

序盤はあまり刺さらなかったが、話数を追うごとにまるで海に溶けていくようにオープニングが飛ばせなくなっていた。

サビの「遠くには~水平線~♪」で水平線(陸が見えてるけど)が映るところが好き。

毎朝フルを聴いて目を覚ましているのはここだけの話。

 

ジャズ調のエンディングも良かった。ピアノが良い仕事をしている。

最終回では2番が流れるというサプライスが起きた。先にフルを聴いていたから新鮮味はあまり無かったけれどね!

 

オープニングとエンディング、いずれも良曲である。

 

 

まとめ:農林水産省も公認の教材アニメ

本作はとうに日常系を逸脱した”教材アニメ”だ。

「釣り」に詳しい人も高く評価していて、復興を目指す芦北町も全力でPRしており、なにより国の農林水産省とタイアップまでしている。

農林水産省の公式Twitterは毎話放送終了後にプチ解説ツイートも流していた。(プチ解説ツイートの一覧はこちら⇒ https://togetter.com/li/1593146 )

これは農林水産省が「このアニメが描いていることは正しいよ」と言っているに等しい。少なくとも農林水産省の中の人が全話目を通してツイートしてるのは間違いないだろう。

 

この記事を公開した頃には絶賛『SHIROBAKO』がNHKで放送されているが、やがて『放課後ていぼう日誌』もNHKで放送されてもおかしくはない。

第1話のタコさんのくだりと、第5話のパンチラのくだりは若干怪しいが...

 

純粋にこの作品がもっと知れ渡ってほしいと、僕はそう思っている。

さぁ、『放課後ていぼう日誌』の世界にフルキャストしよう!!!

 

 

『放課後ていぼう日誌』を配信で観る

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PCの方は、125%に拡大して閲覧することを推奨します。