異種族の風〇をレビューする某アニメに倣って、僕が(全話)視聴したアニメの感想や評価を書いていく「アニメレビュアーズ」。
あの『コードギアス 反逆のルルーシュ(以下、コードギアス)』の後のスタッフやキャストが多く関わっているロボットアニメ『ガン×ソード』。
『コードギアス』本編シリーズを完走し、他の谷口悟朗監督が作品が観たくなったので、全話視聴してきた!
よって今回は『ガンソード』の感想であり、評価であり、レビューである。
- 『ガン×ソード』作品情報
- 嫌いだとは言えない個性的なバカキャラクターたち
- まさしく「痛快娯楽復讐劇」な内容
- 敵が狂った宗教にしか思えないという悲劇
- OP・EDから見える二つの作品の影
- まとめ:西部風バカ男の復讐×ロボット
『ガン×ソード』作品情報
放送時期 | 2005年7月-12月 |
話数 | 全26話 |
ジャンル | SF/ロボット |
アニメーション制作 | AIC A.S.T.A. |
『ガン×ソード』あらすじ・PV
それは、宇宙の底にある、おとぎの国・・・。荒野に夢、街に暴力があふれる、ボンクラ達の理想郷・・・。人呼んで、惑星・エンドレス・イリュージョン。
流浪の男、その名はヴァン。さらわれた兄を追い求める少女・その名はウエンディ。
荒野の果てに、一人は絶望を、一人は希望を見つめ、二人は今、運命の旅へと踏み出すのだった。
引用:ガンソード
『ガン×ソード』スタッフ
監督: 谷口 悟朗
助監督: 久城 りおん
脚本: 倉田 英之
キャラクターデザイン: 木村 貴宏
イメージリーダー: まさひろ山根
メインメカデザイン: 反田 誠二
デザインワークス: 寺岡 賢司
3Dディレクター: 渡辺 哲也
色彩設定: 岩沢 れい子
美術監督: 前田 実
撮影監督: 大矢 創太
編集: 森田 清次
音響監督: 浦上 靖夫
音楽: 中川 幸太郎
製作: ガンソードパートナーズ
『ガン×ソード』キャスト(声優)
ヴァン: 星野 貴紀
ウエンディ・ギャレット: 桑島 法子
カルメン99: 井上 喜久子
ミハエル・ギャレット: 保志 総一朗
レイ・ラングレン: 櫻井 孝宏
ジョシュア・ラングレン: 野田 順子
ファサリナ: 倉田 雅世
メリッサ: 斎藤 千和
カロッサ: 大本 眞基子
ウー: 真殿 光昭
ガドヴェド: 岸野 一彦
カギ爪の男: 堀内 賢雄
プリシラ: 千葉 紗子
『ガン×ソード』評価
評価項目 | 作画 | 演出 | 音楽 | 声優 | ストーリー | キャラ | 設定・世界観 | 雰囲気 | 面白さ |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
点数 | 9 | 9 | 8 | 9 | 8 | 9 | 9 | 7 | 7 |
お気に入り度:★★★☆☆
オススメ度:★★★☆☆
嫌いだとは言えない個性的なバカキャラクターたち
本作は、愛する妻を結婚式で殺された主人公・ヴァンが、妻を殺したカギ爪の男を殺すために旅をする「痛快娯楽復讐劇」だ。
その「ヴァン」という男は、間違いなく本作で最も魅力的なキャラクターだろう。
いつもは気怠けだが戦うときは本気で、人の名前をなかなか覚えられなくて、食べ物には大量の調味料をかけて食し、自分は”童貞”であることをヒロインに堂々と宣言してしまう、いつも通り名が変わる男。
”バカ”としてバチバチにキャラが立っており、なかなかに面白かった。
『ガン×ソード』と言うからには、銃と剣が合体してムチのDNAも兼ね備えたような武器を使っている。
また、彼を演じた星野貴紀さん。どうやら三代目ミッキーマウスの声優みたいだが、本作で初めて名前と声を知り、とてもヴァンという男に合った声質と演技だなと思った。
ただ、ヴァンに関して一つだけ物足りなかった点が。
それは、ヴァンと殺された妻・エレナとの回想シーンをもっと入れてほしかった。
エレナがこれまでとは違う特別な女性だったことは伝わったが、何気なく仲良くしている日常や、愛し合って結婚に至るまでの過程を見せてくれたら、もっとヴァンに感情移入してカギ爪の男に対して憎しみを持ちながら観れた気がした。
あと、エレナの顔すら拝むことができなかったため、単純に気になったというのもある。
続いてメインヒロインの「ウェンディ・キャレット」。
メインヒロインよりサブヒロインの方が可愛い!…というのはアニメによくありがちなことだが、本作ではきちんとメインヒロインの彼女が一番可愛かった。
攫われた兄を追い求めて、ヴァンと共に旅に出たひたむきで真っすぐな少女。
ちょっぴりドジで一途だったりする所が愛おしく、時折髪形が変わることにより印象が変わったり、ワンピースの下の黒いスパッツが見えたりするのは何ともエr・・・じゃなくて萌える。
ビジュアルや言動だけでなく、ウェンディを演じた桑島法子さんの声も演技もめちゃくちゃ良かった。『ナデシコ』はまだ観れてないが、これまでの桑島さんのキャラで一番好きかも。
高くて可愛らしい少女ボイスに、桑島さんの声が大好きな某男性声優さんの気持ちも分かる気がしたね。
他のヒロイン陣(サブヒロイン)も忘れてはいけない。
名前を間違えられまくった「カルメン99」さんは、やはりウェンディの対抗馬となるヒロインであった。そこそこ可愛かったし、最終回では告白もするというパンチを繰り出してきた。
彼女を演じた永遠の17歳であらせられる井上喜久子さんの演技は、ユキコ役の雪野五月さん共々に果てしない安定感で、この世代の女性声優さんは15年前から上手いなと。
一方、2クール目から登場した負けヒロインである「プリシラ」は、キャラと声はマッチしているけれど、キャラと演技は浮き気味だと感じた。
貧乏ながら何人もの孤児を養っているという設定もありきたりだったし、お風呂で裸体が垣間見えてえちえちだったくらいしか印象に残ってないんだ承太郎ッ!
頼むぜ俺の記憶力。
まさしく「痛快娯楽復讐劇」な内容
最愛の妻を殺された憎しみにより、銃と剣が一体化した「ガンソード」とこの世界のロボットにあたる「ヨロイ」を操って、諸悪の根源であるカギ爪の男を追う。
これが物語の大筋でありながら、構成としては基本的に1話完結型だ。
たまに何話かまたがることはあるものの、毎回、旅の途中途中で出会ったキャラクターたちとバカァ~なエピソードを展開し、最後にヴァンたちが立ちはだかる敵を一掃して、これといった次回への引きは無いままにスカッと1話が終わる。
この”起承転結”があるゆえの毎話きちんと纏まる構成・脚本の爽快感はとても良かった。
「毎回バカァ~なエピソードを展開する」と言うが、第1話さえ観てもらえれば分かる。
ウェンディの住んでいる村に流れ着いたヴァンが、その村を襲ってきた「ラッキ~!!!」とか叫んで騒ぎ立てる奇抜な敵を一掃し、ウェンディにいきなり結婚を迫られる。端的にいえばそんな話。
最初ということもあってか、かなりの衝撃があり、全26話のなかで最も色濃くて面白かったのがこの第1話だったと思う(1話が一番面白かったという事はすなわち、以降の25話で1話を超える回が無かったという認識になるが...)。
「バカァ~なエピソード」の極限だったのが、第17話の水着回。
この回は本当にバカバカしくて、とんでもないオチには思わず声を出したよwww
しかもこの回だけ特殊EDで、かかった曲がピンクレディーの「SOS」のカバー。衝(笑)撃の回だった。
ちなみに dアニメストアで視聴したのだが、地上波放送ではあったらしい自主規制はなく、ヒロインたちのピチピチの水着姿が拝見できて眼福の栄にあずかった。
話は飛んで最終回にて、カギ爪の男と顔を合わせた戦闘シーン。
やはり苦戦を強いられる中で、同じ目的を持ちながら敵対していたが案の定仲間になったレイがやられる。
やられ方が「階段オチ」と、西部のガンマン風男の復讐劇を主題に据えてることと言い、昭和臭の漂う”古臭いお約束”を持ってくるのは何とも谷口監督作品っぽいなと思った。こういう要素が、神話を題材に王道ピカレスクロマンをやり遂げた『コードギアス』に繋がって来るのかなと。
そして、カギ爪の男の墓となる場所を一周して囲った防壁を上から乗り越えて、ヨロイに乗ったヴァンが登場。
いつものように長々とねちっこく戦闘を繰り広げるのかと思いきや、予想以上にアッサリとカギ爪の男を墓ごと上下真っ二つに切り裂いて殺した。
レイの銃弾で計画の歯車が止まってしまったり、墓を中心としてドーム型にガードを作らなかったためにダンに防壁を超えられたりと、敵側の詰めの甘さやバカさが見え隠れしてしまったのは腑に落ちないけれど...
本作は「痛快娯楽復讐劇」と銘打たれて世に出た作品であるが、まさにそのキャッチコピー通りの物語。
主人公・ヴァンという男も作品の芯も、最初から最後まで一切ブレなかった。
『コードギアス』という作品とルルーシュという主人公にも同じ感想を抱いたが、終始ブレずに芯が通っている作品やキャラクターって、やっぱりカッコいいよね。
その点は高く評価したい。
敵が狂った宗教にしか思えないという悲劇
物語を大雑把に振り返ると以上のような感じだが、気になった点も少なからず多い。
それは主に”敵”に関してだ。
まず1クール目最後の回であった第13話。
命を救った恩人でありながら、今やカギ爪の男に寝返ってしまった男「ガドベド」と念願の決着をつける話だ。
このガドベドとヴァンが戦っている際、どうしてもガドべドに魅力を感じることができず、エンディングからして”キメの回”だったのだろうが、僕にはあまりキマらなかった。
だが14話以降、ヴァンがガドべドとの思い出を振り返る過去回想シーンが幾度か挟まれるのだが...13話のガドベドとの決着がつくまでにその回想はしとけや!…と怒りにも似た感情を抱いた。
ガドベドとの思い出がそこそこ良い話だっただけに、13話までにその過去が明らかになっていれば、13話のガドベドとの戦闘シーンはより深みが増して白熱できたのになと。
この点に関しては、僕は構成をミスってるなと思いましたまる
そして、ラスボスであるカギ爪の男。
これまでのラスボスには類を見ない、温厚な性格と穏やかな口調。だからこそ、全く罪の意識が無いように見えて狂気をひしひしと感じ、新鮮で嫌悪感しか湧かないキャラクターだった。
登場の仕方も新しかった。
まだまだ中盤のとある回で、ウェンディがふと会話に花を咲かせていたおじいさんが、実はカギ爪の男張本人だと判明するのだ。こんな落ち着いた老人がラスボスで、しかもそんな容易く現れていいのかと、かなりの衝撃を植え付けられた。
しかし、そのカギ爪の男が企てた「人類の歴史をやり直し、みんなに平等と笑顔のある世界を」という計画は、『新世紀エヴァンゲリオン』の「人類補完計画」に似たものを感じてしまい、既視感しかなかった。
『エヴァ』の放送から数年内のSF作品に見受けられる「エヴァの呪縛」から解き放たれてないように感じた。
またカギ爪の男に協力する者たちも、まるでカギ爪の男に洗脳されているようにも見えなくはないセリフと行動で、ヴァンたちが敵に回した団体がただの「狂った宗教」のように思えてしまった。
協力者の一人である、ウェンディの兄やファサリナさんにもそこまで魅力を感じられず、呆気なく死んでいった双子のガキ(カロッサとメリッサ)に至っては「何だったの?」である。
カギ爪の男以外の敵に関しては、たしかに個性的ではあったが、好きになることも嫌いになることもなかったし、あまり魅力的ではなかった。
OP・EDから見える二つの作品の影
僕はこの作品を視聴して、二つの作品の影を感じた。
その影はOP・EDで顕著にちらついているので、OP・EDの感想も交えながらその二つの作品と絡めて本作を語って行きたい。
まずはOP。まだ見たことが無い人は、一度でも良いから見てみてほしい。
インストの曲に乗せ、リズムやSEに合わせてキャラクターたちが画面に出てくるといった内容だ。
これにどうしても『カウボーイビバップ』の伝説のOP「TANK!」っぽさを感じてしまう。もしやこのOPは『カウボーイビバップ』になりたかったのか?
だが、やはり到底『カウボーイビバップ』には届いてないと思う。
けれども、僕はこのOPは好きだ。
登場したキャラクターは透明姿でなくなったり、逆に死んだキャラクターは透明姿にされるという演出は面白かったし、素早いカットの切り替えは僕好みのOPである。
『ガン×ソード』のタイトルの登場の仕方もかっこいい。
かつ、背景の映像効果には『コードギアス』っぽさを感じる。
本編シーンの「ヨロイ」内部にも、この紫と黒の形容しがたい模様が無造作に波打つ映像効果が使われていたりと、本編中の至るところでも『コードギアス』っぽさを感じた。
EDもそれだ。
『ガン×ソード』はキャラデザ・作画監督の木村貴宏氏、『コードギアス』はキャラ原案のCLAMP先生がイラストを手掛けているが、絵のタッチが非常に似ている。
また、本編では見せない”在りし日の平穏な日常”を描いているという点では共通している。
まるで『コードギアス』の前世を見ているような感覚にも取り憑かれた。
まとめ:西部風バカ男の復讐×ロボット
監督の谷口五郎氏やキャラデザ・作画監督の木村貴宏氏などのメインスタッフが被っている(メインアニメーター、色彩設計、音楽が被ってるのも確認済み)という事もあり、のちの『コードギアス』になるんだろうなぁ…という雰囲気がとても感じられた。
『ガン×ソード』が思うように売れなくて悔しかったから、次回作は売れるように・・・と試行錯誤して生まれたのが『コードギアス』という噂もあるが、真相は闇の中である。
『コードギアス』等、他の谷口監督作品と切り離して単独で見ても、
やりたかった事はすごく分かるし、なにかが欠けて駄作・凡作になっているという訳ではない。けれど正直、売れなかったのも今の知名度が低いのも納得できる作品。
終始そこそこ面白かったが、あまり面白くないハズレ回もあり、特に面白かったのは序盤の数話のみ。
僕にとって本作『ガン×ソード』は頬を掠った程度で留まっており、レビューサイトの評価ほどではないというのが感想だ。